生物系特定産業技術研究支援センター

(27009A) トランス脂肪酸問題の質的解決に向けたトランス脂肪酸異性体ごとの代謝性評価

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(シーズ創出ステージ)
実施期間 平成27~29年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
東京海洋大学、佐賀大学、月島食品工業株式会社
作成者 東京海洋大学 後藤 直宏

1 研究の背景

現在、心臓病や動脈硬化発症リスクを高めると言われ、世界中で問題となっている食品中のトランス脂肪酸に対し、農林水産省・食品安全に関するリスクプロファイルシートの第12項「リスク管理を進める上で不足しているデータ等」に記されている「トランス脂肪酸の種類ごとの健康影響評価」が実施されていない。

2 研究の概要

トランス脂肪酸問題の質的な解決を図るために、トランス脂肪酸位置異性体を合成し、これを用いて、日本国内で流通する食品に含まれるトランス脂肪酸位置異性体分析、肝細胞への影響、ハムスターへの影響を精査した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 国内で流通している250点の食品サンプルを分析し、これら食品中のトランス脂肪酸含有量、異性体分布を明らかにした。
  • 合成したトランス脂肪酸位置異性体を肝細胞試験へ添加し、trans5-18:1 に Apo-B上昇能 (LDL上昇能) が備わっていることを観察した (J. Oleo Sci. 66, 1175-1181 (2017))。ただし、動物試験では影響なし。

4 研究終了後の新たな研究成果

国内で流通している250点の食品サンプルを分析し、これら食品中のトランス脂肪酸含有量、異性体分布を明らかにし、その成果を学術論文誌で発表した。J. Oleo Sci. 68, 193-202 (2019)

5 公表した主な特許・品種・論文

  • K. Nagao, et al., Comparison of the effect on apolipoprotein A1 and B secretion among trans fatty acid isomers using HepG2 cell. J. Oleo Sci. 66, 1175-1181 (2017)
  • N. Gotoh, et al., Study on the trans fatty acid formation in oil by heating using model compounds. J. Oleo Sci. 67, 273-281 (2018)
  • N. Gotoh, Evaluating the content and distribution of trans fatty acid isomers in foods consumed in Japan. J. Oleo Sci. 68, 193-202 (2019)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 発表した論文内容を動画scriptの形で論文誌ホームページで公開 (video 2)
  • 令和元年11月23日に開催された第27回加工油脂栄養研究会 (東京) の発表「加工油脂を巡る最近の話題(27)」の中で、公表論文 J. Oleo Sci. 68, 193-202 (2019) が最近の話題の一つとして紹介された。

(2) 実用化の達成要因

得られた結果を論文の形で世に発信したこと。一般の者にもわかりやすく動画を作成、学会のHP等でも公開。

(3) 今後の開発・普及目標

今後も得られた成果を論文の形で世へ発信し、トランス脂肪酸問題の現状を多くの人に知ってもらう。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

トランス脂肪酸を構成するトランス脂肪酸異性体のうち、どの異性体が心臓病や動脈硬化発症リスクを高める原因かを突き止め、トランス脂肪酸問題の本質を明らかにすることで安全・安心な国民生活へ貢献する。

(27009A) トランス脂肪酸問題の質的解決に向けたトランス脂肪酸異性体ごとの代謝性評価