生物系特定産業技術研究支援センター
(25050B) 耕作放棄地を活用した大規模スケールでの藻類バイオマス有効利用技術の確立
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(発展融合ステージ) |
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実施期間 | 平成25~26年(2年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
筑波大学、農研機構 農村工学研究所、産業技術総合研究所、高砂熱学工業株式会社、キャノン電子株式会社、株式会社フジキン、三和農林株式会社、ユニチカ株式会社 |
作成者 | 筑波大学 渡邉 信 |
1 研究の背景
微細藻類はそのオイル生産効率の高さから次世代バイオマス資源として注目されており、次世代のエネルギー、医薬品、健康食品、化学品の資源とするために、大規模スケールでの野外実証実験が必要とされている。
2 研究の概要
炭化水素産生藻類ボトリオコッカスの野外大量培養技術開発、濃縮・収穫技術の最適化、炭化水素の抽出と精製技術の最適化、バイオマスの燃料への変換並びにオイル抽出残渣の有効利用技術開発をおこなった。
3 研究期間中の主要な成果
- 炭化水素産生藻類、ボトリオコッカスについてバック型バイオリアクターの開発と効率的な排ガスCO2供給法を確立により高い炭化水素油生産性がえられた。
- 細胞非破壊的にオイルを抽出できるミルキング技術を開発し、藻類バイオマス生産の大幅な省エネ・低炭素・低コスト化につながる可能性を高くした。
- ボトリオコッカス炭化水素については粗油でも精製油よりも高い運輸燃料変換効率を得られた。
4 研究終了後の新たな研究成果
福島復興藻類プロジェクト第二期 (2016~2018) において、下水を利用した藻類のポリカルチャー法により周年を通じて高い藻類バイオマス生産を実現、さらに濃縮・脱水した藻類ペレットの水熱液化技術による原油化に成功し、また藻類培養廃水は排水水質基準値以下に浄化されたことで、下水処理にかかる経費やエネルギー削減も可能となった。
5 公表した主な特許・品種・論文
- Moheimani, N.R. et al. Non-destrictive hydrocarbon extraction from Botryococcus baraunii BOT-22 (race B). Journal of Applied Phycology 26, 1453-1463 (2014)
- Murata, K. et al. Hydrocracking of Algae Oil into Aviation Fuel-Range Hydrocarbons Using a Pt-Re Catalyst. Energy Fuels 28, 6999-7006 (2014)
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
ボトリオコッカスの炭化水素の化粧品利用技術が開発され、デンソーにより2014年にはハンドクリームとして、さらに2016年にUVカットハンドクリームとして実用化され、累計販売額は約1.5億円となっている。
(2) 実用化の達成要因
バック型バイオリアクターの開発と効率的な排ガスCO2供給法の確立により高い炭化水素油生産性の確立。
(3) 今後の開発・普及目標
- 化粧品については、今後フェイスクリーム、ボデイクリームを開発し、販売・普及していく。
- 燃料生産については、2020年度から、途上国で実用化にむけた実証事業を展開し、バイオ原油の実用化にむけて加速度的に進展する。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
化粧品は累積販売額は150,000千円であるが、将来的には1,000億円をみこんでいる。燃料については、途上国での大規模面積 (7万ha以上) での生産により、80兆円の経済効果がみこまれている。