生物系特定産業技術研究支援センター

(c014) 北海道産米の高付加価値化のためのアミロース含量の非破壊計測技術の開発

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年(1年間)
研究グループ
(研究終了当時)
北海道大学,北海道立総合研究機構中央農業試験場,静岡製機株式会社,ホクレン農業協同組合連合会
作成者 北海道大学 大学院農学研究院 川村 周三

1 研究の背景

北海道では米の共乾施設でタンパク質含量を実測し出荷する「タンパク仕分」を導入した。ところが,共乾施設で迅速に精度良く米のアミロース含量を実測する技術が確立されていないことが大きな課題であった。そこで、近赤外分光法と可視光分析法とを統合し、アミロースの非破壊計測技術を開発することを目的とした。

2 研究の概要

近赤外分光法と可視光分析法とを統合した二段階検量線を開発した。その結果、高精度で安定した米のアミロースの非破壊計測が実現した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 近赤外分析計に改良を加え、温度依存性を抑制しスペクトルのノイズを低減する温度補償機能と波長校正機能を搭載し、安定した近赤外スペクトルの測定を可能とした。
  • ゆめぴりかの未知試料の測定誤差が0.56%であり、共乾施設におけるゆめぴりかの「タンパク・アミロース仕分」が実装可能であることが示唆された。

4 研究終了後の新たな研究成果

開発した近赤外分析計と可視光分析計(穀粒判別器)を利用した二段階検量線により、米の収穫後の現場(共乾施設や精米工場)において未知試料の玄米および精白米のアミロースを安定して精度良く実測することが可能となった(測定の標準誤差0.4~0.5%)。北海道農業試験会議(成績会議)の審査を経て「近赤外分光分析による米のアミロース含量計測技術」が北海道農政部より「指導参考」に指定された。

http://www.hro.or.jp/list/agricultural/result_pdf/result_pdf2019/2019216.pdf

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特願 6347352,穀粒の品質測定装置, (石津裕之,青島由武,福元義高,殿柿章子:静岡製機)
  • Olivares, D. E., et al., Combined use of a near-infrared spectrometer and a visible light grain segregator for accurate non-destructive determination of amylose content in rice,Journal of Cereal Science,90,1-7(2019).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 2020年秋、北海道内の共乾施設や精米工場で開発した二段階検量線を用いて米のアミロースを非破壊で実測することが始まった。
  • 2016年末に販売開始された近赤外分析計SGEと穀粒判別器ESは、2020年末時点においてそれぞれ166台、575台が販売された。

(2) 実用化の達成要因

農業試験場、ホクレン、静岡製機と連携し、北海道内の米の共乾施設や精米工場へアミロース非破壊計測技術を実装し普及を進める体制を構築する。

(3) 今後の開発・普及目標

今後数年を経てこの技術は北海道内の共乾施設や精米工場に実装され、その後さらに北海道外の米の主要な生産地にも波及する。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

米のタンパク質アミロース等の品質(成分)情報を付けた高付加価値の米が販売され,米の最終消費形態 (白飯,丼飯,炒飯,加工米飯など)に合わせた品質仕分が社会実装される。

(c014) 北海道産米の高付加価値化のためのアミロース含量の非破壊計測技術の開発