生物系特定産業技術研究支援センター

(c028) カンショでん粉の高付加価値化による国際競争力の強化

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年~29年(1年間)
研究グループ
(研究終了当時)
鹿児島大学農学部、鹿児島大学大学院連合農学研究科、鹿児島県大隅加工技術研究センター、日本澱粉工業株式会社(現社名:株式会社サナス)
作成者 株式会社サナス

1 研究の背景

カンショでん粉とオゴノリから生産されるアンヒドロフルクトース(AF)は、安全な糖であると同時に細菌に対する静菌効果の特性を示すため、実用化に向けて解決すべき課題に対して総合的に取り組んだ。

2 研究の概要

原料のカンショでん粉から生産するAFを静菌用途で普及するために、本事業では静菌に関する基礎試験、メカニズム解析、用途開発およびAF生産技術の開発に取り組んだ。

3 研究期間中の主要な成果

  • AFが食中毒菌バチルス・セレウスにも静菌作用を示すこと、スイートポテトやかるかんの日持ちを向上させること、さらにその静菌作用は醸造酢との併用で相乗的に高まることを見出した。
  • メカニズム解析においてAFは生育に必要なNADPHの枯渇により増殖を抑制することが確認され、また芽胞形成に関与するタンパク質の発現量低下により芽胞形成が抑制される可能性が指摘された。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • AFと酢酸の併用効果を見出した成果によって、AF製品と醸造酢を混合したハツガードVを製品化できた。
  • 顧客に配布するアンヒドロフルクトース含有水飴の使用マニュアルを作成した。また、複数の会社での使用実績に繋がった。
  • アンヒドロフルクトースの静菌メカニズムを解明し、マニュアルに反映した。
  • 酵素活性が高い海藻と低い海藻は、種が異なり、高いものは同一の種であることがわかった。

5 公表した主な特許・品種・論文

特願 2019-130970 酵素グルカンリアーゼ活性の高い海藻 (出願人:鹿児島大学、株式会社サナス)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • アンヒドロース(AF製品)、販売数:2,352kg、販売額 :4,704,000円
  • ハツガードV®、販売数:12kg、販売額:18,840円

(2) 実用化の達成要因

(株)サナスは学会や講演会でAFの静菌作用を発表し、鹿児島県大隅加工技術センターと鹿児島県水産技術開発センターは県内の食品会社が集まる報告会で発表した。また、東京や福岡の展示会にも出展し、継続的かつ積極的に普及活動に取り組んでいる。

(3) 今後の開発・普及目標

  • 3年後までに、AF製品で国内300トン販売を目指す。
  • 5年後、海外での販売に向けてアメリカ合衆国の認可を得る。
  • 最終的には、海外市場も含めAF水飴で2,000トン、その原料としてカンショでん粉で2,500トンの消費を達成する。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

AF水飴の利用が拡大することにより、その原料であるカンショと海藻オゴノリの消費が拡大する。また、将来的にオゴノリの養殖が達成できればオゴノリの生産者の収入増加とオゴノリ原料の将来の安定確保が達成できる。AF水飴の作用機序が静菌効果であることを明らかにした。この機序は消費者に不安を与えないと期待できる。これまで化学合成の食品添加物で日持ち性の向上が図られてきた加工食品を天然食品素材AFに置き換えることで、安心感を提供するとともに天然嗜好の消費者のニーズに応え、またフードロスが軽減できる。

(c028) カンショでん粉の高付加価値化による国際競争力の強化