生物系特定産業技術研究支援センター

(c054) 温暖地域におけるリンドウの切り花品質の向上と安定栽培技術の開発
耐暑性品種の選定と花弁着色不良要因の解析

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年(1年間)
研究グループ
(研究終了当時)
山口県農林総合技術センター、山口大学
作成者 山口県農林総合技術センター 藤田 淳史

1 研究の背景

西南暖地では、リンドウの最需要期である盆・彼岸時期を含め、十分な需要を満たすほどの出荷がなされていないことから同時期に出荷可能な耐暑性品種の導入と栽培面での改善が強く望まれている。

2 研究の概要

低標高温暖地域でのリンドウ栽培において、切り花の品質向上と安定生産に関する技術課題に対応するため、耐暑性品種の導入のための品種選定を行う。さらに高温開花時における花弁着色不良要因を解析することで、夏期需要期における安定出荷や栽培可能地域の拡大を図る。

3 研究期間中の主要な成果

  • 温暖地域での1年生株の欠株率が10%以下かつ2年生株の花弁着色不良花の発生株率が10%以下の基準により耐暑性の選定を行った結果、山口県育成の3品種について対照品種よりも優れた特性を有することを確認した。
  • 欠株率低減、花弁着色不良症状軽減を実現するため、花蕾生長期に55%遮光率の被覆資材を使用し、栽培環境が30℃以下となる栽培体系を構築することで、高温期における大幅な出荷量増加を実現できた。

4 研究終了後の新たな研究成果

本成果を取りまとめ、山口県農林総合技術センター「平成29年度の新たに普及に移しうる研究成果(No.42)」(以下HP)に掲載し、生産現場への普及を図った。

https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/f/e/7/fe7771c71725ad292e8ab0780a6aa6fa.pdf

5 公表した主な特許・品種・論文

蕾の温度に着目したリンドウの花弁着色障害発生条件の解析(荊木康臣 山口大学大学院創成科学研究科 日本農業気象学会2019年全国大会 )

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1)実用化・普及の実績

  • 山口県内の温暖地域である平坦部を含めた全域でリンドウの耐暑性品種の作付が進み、栽培面積は3.4haに増加しており、現在も継続的に導入が進んでいる。
  • 上記品種導入と並行し、高温による着色不良症状に対応するための技術として、遮光被覆資材を使用した栽培体系についても導入促進を図った。

(2)実用化の達成要因

山口県花き振興計画においてリンドウを県花き振興の重点品目として位置付け、本成果と連動し各種施策を展開するとともに、各地域の花き生産部会等と連携し推進したことによる。

(3)実用化・普及の実績

安定出荷体制の確立を目指すために、耐暑性を有する後継新品種の導入と総合的な遮熱対策技術を展開し、2025年度に山口県内において10ha規模の産地形成を目標に普及を図っている。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

国内においてリンドウの栽培可能地域が拡大するとともに、最需要期の盆・彼岸期において高品質な切り花が安定的に供給できる環境が整い、花きの利用促進および文化的醸成等に対して貢献できる。

(c054) 温暖地域におけるリンドウの切り花品質の向上と安定栽培技術の開発
耐暑性品種の選定と花弁着色不良要因の解析