生物系特定産業技術研究支援センター

(c124) イサダを全利用した高付加価値素材の効率的生産体系構築

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年(1年間)
研究グループ
(研究終了当時)
岩手生物工学研究センター,株式会社國洋、甲陽ケミカル株式会社、株式会社マリン大王、京都大学、香川大学、岩手医科大学
作成者 帝京科学大学 生命環境学部 生命科学科 山田 秀俊

1 研究の背景

三陸地域では1970 年代からイサダ漁が行われてきたが、近年はイサダ需要が減少し、漁業者の収入が低下している。イサダ需要増加による漁業者の収入安定化が喫緊の課題である。

2 研究の概要

本課題では、イサダに含まれる機能性等の成分を余すことなく活用し、高付加価値素材を生産することでイサダの新規需要創出を目指して研究に取り組んだ。

3 研究期間中の主要な成果

イサダからEPA・DHA、アスタキサンチンを含有するオイル素材、オキアミ特有の新規抗肥満成分:8-HEPE、動物性蛋白質原料となるミール、旨味・香味成分を含有するエキスを体系的に分離・濃縮する技術を開発した。また、エキスの生臭さを低減し、嗜好性を向上させる亜臨界処理技術の開発とイサダオイルの安定粉末化技術を開発した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 数十トンの冷凍イサダ原料から遠心分離によってオイル、ミール、エキスを分離して素材化する技術体系を構築し、工場での生産を可能にした。
  • 乾燥イサダ原料からアルコール抽出によって8-HEPE含有イサダオイルを分離抽出し素材化する技術を開発し、8-HEPE含有イサダオイルを製品化した。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特願2018-106553号 8-ヒドロキシエイコサペンタエン酸の薬理用途(出願人:岩手医科大学、岩手県)
  • Yamada H., et al. Lipids, fatty acids and hydroxy-fatty acids of Euphausia pacifica. Scientific Reports (2017)
  • Saito M., et al. 8-HEPE-concentrated materials from Pacific krill improve plasma cholesterol levels and hepatic steatosis in high cholesterol diet-fed low-density lipoprotein (LDL) receptor-deficient mice. Biol Pharm Bull. (2020)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • イサダオイルを活用したサプリメントが製品化され、販売されている。
  • 遠心分離によるイサダオイル、ミール、エキスの分離と素材化技術を導入した工場が岩手県大船渡市に建設され、試験製造を開始している。

(2) 実用化の達成要因

  • 岩手県の関連機関と協力し、地域ニーズをしっかり把握した上で地域戦略を立案できたこと。
  • 優れた基礎研究を実施できる学術機関とイサダの製品化に情熱をもった地域企業、開発力のある協力企業がバランス良く参画したコンソーシアムを形成し、研究開発を推進できたこと。

(3) 今後の開発・普及目標

イサダオイル粉末素材を活用した機能性食品等の普及を目指すとともに、オキアミ特有の機能性成分である8-HEPEやアルキル型リン脂質のヒトでの有効性を示すデータの取得を目指していきたい。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

食品や健康食品分野でのイサダ需要増加が見込まれる。それにより、イサダ漁業者の収益安定化が期待される。また、新たな機能性素材普及によって、健康長寿社会実現への貢献も期待される。

(c124) イサダを全利用した高付加価値素材の効率的生産体系構築及び実証試験