生物系特定産業技術研究支援センター
(c130) ドコサヘキサエン酸(DHA)を高濃度で含むブリの開発
事業名 | 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト) |
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実施期間 | 平成28年~29年(1年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
高知大学、尾鷲物産株式会社 |
作成者 | 高知大学 深田 陽久 |
1 研究の背景
ブリは、人間の健康に良いドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等のn-3系高度不飽和脂肪酸(n-3 HUFA)を多量に含んでいる。天然のブリや通常の養殖ブリよりもn-3 HUFAを多く含む養殖ブリ(高付加価値養殖魚)を生産できれば、健康に寄与する養殖ブリとして通常の養殖ブリや天然ブリとの差別化による国内市場での売上増、また輸出増が望める。
2 研究の概要
本研究では、養殖ブリの切り身100gのDHA含量を、DHA/EPAの一日の摂取推奨量以上、かつ養殖魚種の中で最もDHA含量の多いクロマグロと同等になるように増加させる。また、DHAを効率良く増加させる飼料組成と育成方法の確立し、国際的に競争力のあるブリ養殖を実現する。
3 研究期間中の主要な成果
- DHAを多く含む飼料を給餌することで、ブリ幼魚の成長向上が見られた。
- DHAを多く含む飼料を給餌することで、可食部(フィレ)のDHA含量を対照区の1.5倍以上にできた。
- 大型のブリ(4kg以上)を用いて、クロマグロ(トロ)と同等の3.3g/100g(可食部)のDHA含量を達成した。
4 研究終了後の新たな研究成果
- DHA含量の高いブリを安定的に生産することに成功。
- 増肉係数を従来比5~7%改善。
https://www.owasebussan.net/dha
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/brain/innovation/results/2019/29023C.html
5 公表した主な特許・品種・論文
- Shinagawa, J. et al. Development of a docosahexaenoic acid (DHA)-rich yellowtail Seriola quinqueradiata by using tuna by-product oil. Fish. Sci. 83. 1-11 (2017).
- 品川純兵他.飼料脂肪酸組成がブリ筋肉中ドコサヘキサエン酸量に及ぼす効果. 水産増殖学会誌 66, 61-69 (2018).
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- 尾鷲物産(株)より、自社ブランド「プレミアムDHAブリ」として名古屋市近郊のスーパーでの販売。
- 期間限定商品として全国展開している回転寿司チェーン店より「尾鷲のトロぶり」として販売。
(2) 実用化の達成要因
- 連携先であり、且つ生産・販売先となる尾鷲物産株式会社と協議を綿密に行ったこと。
- 高知大学の養殖ブリの生産と販売における高い技術とノウハウ。
(3) 今後の開発・普及目標
今後の開発:すでに「イノベーション創出強化研究推進事業(2017年度~2020年度)」に採択され、飼料会社もコンソーシアムメンバーとして、技術の向上を行った。
普及目標:海外への本商品の展開
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- 養殖魚の脂質代謝を理解することで、養殖魚の成長、高付加価値化を望めることが波及できた。
- ブランド化を進めたことにより売価がアップした。
- 少ない量で必要な栄養素を摂取しやすくなり、国民の健康的な生活に寄与できる。