生物系特定産業技術研究支援センター

(26095C) 実需者と生産者の期待に応える高品質で安定多収な小豆品種の開発

事業名 イノベーション創出強化研究推進事業(開発研究ステージ)
実施期間 平成26年~30年(5年間)
研究グループ
(研究終了当時)
北海道立総合研究機構 十勝農業試験場・上川農業試験場、北海道農政部、株式会社虎屋
作成者 北海道立総合研究機構 十勝農業試験場 冨田謙一

1 研究の背景

道産小豆は品質に優れ風味が良いことから実需者の評価が高いが、冷害や土壌病害の発生により供給が不安定であり、実需者は価格と供給の安定を、生産者は収量の安定と収益性の向上を求めている。

2 研究の概要

実需者が求める加工適性を有し、安定した価格と供給を可能とする①道東向け高品質で耐冷性・耐病性に優れた品種、および②道央・道南向け高品質で耐病性に優れた多収品種の開発を行う。

3 研究期間中の主要な成果

  • 道東向けとして、「サホロショウズ」並の早生で、落葉病レース1および茎疫病レース1・3・4抵抗性、「エリモショウズ」並の耐冷性を有し、「きたろまん」並以上の加工適性を有する新品種「ちはやひめ」を開発した。
  • 道東・道央向けとして、実需者からの品質評価が高い中生の基幹品種「エリモショウズ」に落葉病レース1抵抗性を導入し、病害抵抗性以外は「エリモショウズ」と同等な新品種「エリモ167」を開発した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 主に道央向けとして、「きたのおとめ」並の熟期・収量性で、耐倒伏性に優れ、落葉病レース1・2、茎疫病レース1・3・4、萎凋病に抵抗性を有し、加工適性が「きたのおとめ」並である新品種「十育170号」を開発した。
  • 主に道東向けとして、「きたろまん」並からやや早い成熟期で、倒伏程度は同程度、胚軸長が長く、地上10cm高莢率の低い、コンバイン収穫適性に優れる有望系統「十育180号」を開発した。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 品種登録出願31408 小豆品種「ちはやひめ」(H28年8月) (出願者名:北海道立総合研究機構)
  • 品種登録出願31960 小豆品種「エリモ167」(H29年3月) (出願者名:北海道立総合研究機構)
  • 堀内優貴.あずき新品種「ちはやひめ」の育成.北海道立総合研究機構農業試験場集報 第105号,印刷中 (2021) .

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 平成28年に品種登録出願公表された「ちはやひめ」は、平成29年度に原原種圃5aを設置し、60kgの原種圃用の種子を得た。令和元年度に8haの試作・一般栽培が行われた。
  • 平成29年に品種登録出願公表された「エリモ167」は、平成29年度から原原種、原種、採種生産が計画的に行われており、平成29年は42ha、30年は487ha、令和元年は1,749haの一般栽培が行われた。

(2) 実用化の達成要因

作付け面積が伸びている「エリモ167」は、「エリモショウズ」に土壌病害抵抗性のみを導入した品種であるため、実需者・生産者ともこれまでどおりに扱うことができ、安心して普及を推進できるメリットがあった。

(3) 今後の開発・普及目標

本課題において開発された有望系統については、イノベーション創出強化研究推進事業において品種開発に向けた試験を継続実施中で、上記「十育170号」に加えてもう1品種の開発を目指している。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

品質の良い道産小豆の生産安定性が増し、より確実に安定供給が行われることにより、輸入小豆の供給が滞っても、伝統ある日本各地の和菓子文化を維持し、後世に伝承していくことが可能となる。

(26095C)実需者と生産者の期待に応える高品質で安定多収な小豆品種の開発