生物系特定産業技術研究支援センター

(25053C) ギフアブラバチの大量増殖と生物農薬としての利用技術の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構野菜花き研究部門、長野県野菜花き試験場、岐阜県農業技術センター、鹿児島県農業開発総合センター、琉球産経株式会社、アリスタライフサイエンス株式会社
作成者 農研機構野菜花き研究部門 武田 光能

1 研究の背景

施設ピーマンではスワルスキーカブリダニ、タイリクヒメハナカメムシやコレマンアブラバチの天敵利用を核としたIPMが進められ、潜在害虫のジャガイモヒゲナガアブラムシに対する天敵利用が求められていた。

2 研究の概要

農研機構のギフアブラバチ系統維持技術を活用し、その大量増殖と製剤化技術を開発して生物農薬としての登録を取得し、利用技術のマニュアル化を行い、ピーマン類の天敵利用を核としたIPMを完成させる。

3 研究期間中の主要な成果

  • 代替寄主ムギヒゲナガアブラムシの飼育体系を応用し、ギフアブラバチのマミー(蛹)製造効率化によって週10万匹の大量増殖を行い、マミーの洗浄回収法と製剤化技術でギフパールの生産技術を確立した。
  • ギフアブラバチ製剤のアブラムシ防除技術としての成虫放飼法の開発と実証によってピーマン、とうがらし類を適用作物とした生物農薬の登録を取得し、バンカー法を含めた利用技術マニュアルを公表した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • ギフパールの対象作物として、ジャガイモヒゲナガアブラムシの発生が問題となるなすを対象に、ギフパールの成虫放飼による防除効果を明らかにし、適用作物になすを追加した。
  • ピーマンで問題となるワタアブラムシ、モモアカブラムシとジャガイモヒゲナガアブラムシの3種に対して、天敵放飼前に低密度とするための有効農薬と天敵への影響評価を行い、天敵利用体系を構築した。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 農林水産省登録 第 23771号(出願人:アリスタライフサイエンス株式会社)
  • 商標登録としてギフパール®を取得 (出願人:アリスタライフサイエンス株式会社)
  • Ohta, I. et al. Acute toxicities of 42 pesticides used for green peppers to an aphid parasitoide, Aphidius gifuensiss (Hymenoptera: Braconidae), in adult and mummy stages. Appl. Entomol. Zool. 50;: 207-212 (2015)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 土着天敵のギフアブラバチを生物農薬として製剤化(商品名:ギフパール®)し、バンカー開始セットのギフバンクを販売した。 ギフパールの販売は2018年が165本、2019年が106本、2020年が118本であった。
  • 鹿児島県では、生産者40戸以上でギフパールが利用されており、普及面積として12ha以上の面積で利用が把握されている。鹿児島以外では、80~100本程度で10~12ha程度の利用と推定される。

(2) 実用化の達成要因

鹿児島県の施設ピーマンでは、ジャガイモヒゲナガアブラムシの被害が顕在化しており、現場ニーズが高く実用化を可能とした。また、ピーマン栽培で天敵利用が進んでいたことが普及につながる要因であった。

(3) 今後の開発・普及目標

ギフアブラバチ利用技術の普及目標は施設栽培ピーマンの20%の200haとした。この目標達成には、天敵利用が進んでいる鹿児島県以外の施設ピーマンの栽培地域での普及活動を進める必要がある。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

ピーマン等の天敵利用を核としたIPM体系での残された問題であったジャガイモヒゲナガアブラムシの天敵利用技術を開発し、安全・安心な農作物の生産、環境にやさしい農業の推進に貢献した。

(25053C) ギフアブラバチの大量増殖と生物農薬としての利用技術の開発