生物系特定産業技術研究支援センター

(25062C) 革新的接ぎ木法によるナス科野菜の複合土壌病害総合防除技術の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
群馬県農業技術センター、農研機構中央農業研究センター
作成者 群馬県農業技術センター 環境部病害虫係 池田 健太郎

1 研究の背景

ナス栽培において、土壌伝染性の病原菌であるVerticillium dahliaeによって引き起こされるナス半身萎凋病による被害は甚大であり、全国的に問題となっている。

2 研究の概要

アメリカ・カリフォルニア州では、ブロッコリーとの輪作によって、V. dahliaeによる病害に対し、防除に成果を挙げている。この技術を応用し、ブロッコリーとの輪作による同病への防除効果を検討した。

3 研究期間中の主要な成果

  • ナスの前作にブロッコリーを作付け(栽培・収穫後・残さすきこみ)することによって、ナス半身萎凋病を抑制する管理技術を開発した。
  • その要因として、ブロッコリーの栽培中にナス半身萎凋病の病原菌密度が低下することを明らかにした。
  • ブロッコリーがナス半身萎凋病菌をトラップするおとり作物として働いている可能性を示唆した。
  • 半身萎凋病抵抗性台木の高接ぎ木および多段接ぎ木ナスと併用すると安定した効果が得られた。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • ブロッコリーを前作した栽培データを収集し、この管理技術の安定化にかかる要因を解析した結果、前作のナスの発病株割合がおよそ30%以下での適用や、半身萎凋病の抵抗性台木を用いること、ナスの罹病葉を圃場に放置しないで処分することで、ナス半身萎凋病を抑制する効果が安定化することが判明した。
  • 継続してブロッコリーとの輪作を続けることで発病が漸減していくことも事例として確認した。

5 公表した主な特許・品種・論文

Ikeda, K. et al. Crop rotation with broccoli suppresses Verticillium wilt of eggplant. Journal of General Plant Pathology 81:77-82 (2015)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 群馬県で8戸120a、山口県で2戸25aの導入。
  • その他、ナス産地で広く導入されている。

(2) 実用化の達成要因

効果が得られる事例やそうでない事例についてよく把握し、発病程度が高い圃場での導入には効果が低いことや抵抗性の台木を合わせて使うことで効果が安定することを踏まえて技術普及を行ったところ、生産現場での大きな失敗例もなく普及が進んだ。

(3) 今後の開発・普及目標

ナス半身萎凋病菌であるV. dahliaeはナス、トマトなどのナス科野菜、キャベツ、ハクサイなどのアブラナ科野菜、キクなどへの花き類へも深刻な被害を及ぼしている。今回開発した管理技術を、これらの野菜類・花き栽培における土壌病害対策へも展開する。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

本研究での成果を活用することで、土壌くん蒸剤などの化学農薬への過度の依存を脱却することができる。そのことにより、生産者の不必要な防除費用の負担が軽減する。また、ナス半身萎凋病発生によって遊休化している農地での活用を進めることで、生産者の収入確保にも貢献する

(25062C) 革新的接ぎ木法によるナス科野菜の複合土壌病害総合防除技術の開発