生物系特定産業技術研究支援センター
(25065C) 機械除草を中核とした水稲有機栽培システムの確立と実用化
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成25年~27年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
群農研機構(中央農研、生研センター、東北農研)、島根県農業技術センター、福島県農業総合センター、新潟県 農業総合研究所、岐阜県中山間農業研究所、岐阜県情報技術研究所、みのる産業株式会社、東京農工大学 |
作成者 | 農研機構中央農業研究センター 三浦 重典 |
1 研究の背景
国内外において有機農産物に対する需要が増加している中で、水稲については省力的で汎用性が高く安定した収量が得られる有機栽培システムの確立が求められている。
2 研究の概要
水稲有機栽培で最大の課題である除草対策として、除草機械の改良、製品化を行うとともに機械除草と耕種的抑草技術を組み合わせた除草体系を提示する。これを中心に新規に有機栽培を開始しようとする生産者が、育苗から収穫までとおした栽培管理を実践できるような有機栽培システムをマニュアル化する。
3 研究期間中の主要な成果
- 有機栽培の実施を希望する生産者等が利用できる「水稲有機栽培技術マニュアル」を作成し公開した。
- 小規模な有機栽培に取り組む際の初期導入技術として、軽量(約8kg)かつ安定した除草効果が得られる人力牽引型チェーン除草機を実用化した。
4 研究終了後の新たな研究成果
- 水田小型除草ロボットの開発を継続し、超音波センサーの追加等により、ロボットの稲列追従性能及び枕地での旋回成功率が向上した。
- 超音波照射がイネ以外の植物体の病害抑制に有効であることを示し、イチゴの育苗ハウスに設置する可動式の超音波照射装置を開発した。
5 公表した主な特許・品種・論文
- 三浦重典他、機械除草と米ぬか散布等を組み合わせた水稲有機栽培体系の抑草効果と収量性.中央農研研究報告24, 55-69(2015)
- 三浦重典他、機械除草を中心とした水稲有機栽培マニュアル.
https://ml-wiki.sys.affrc.go.jp/Organic-Pro/(Web文書:2016, 最終更新2020年10月)
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- 「水稲有機栽培技術マニュアル」は、島根県、滋賀県などで有機栽培の手引書の作成に活用されたほか、Webページは多くの生産者や普及指導担当者に閲覧されている。
- チェーン除草機は、農機具店における受注生産と個人製作を合わせて少なくとも数十機が利用されている。
(2) 実用化の達成要因
水稲有機栽培に関する研究会の開催、研修会の講師、商用誌への投稿等により技術普及を進めている。
(3) 今後の開発・普及目標
栽培マニュアルの更新を毎年3回程度実施し最新の情報を提供するとともに、研究会、研修会等への対応を継続する。水田用小型除草ロボットは開発を継続しており、みのる産業株式会社から上市を予定している。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
化学合成された農薬や肥料を使用しない省力的な有機栽培体系を提示したことで、消費者に「安全・安心」と評価されている有機農産物の生産拡大に貢献している。