生物系特定産業技術研究支援センター

(25077C) 種子イチゴイノベーションに向けた栽培体系と種苗供給体制の確立

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
三重農研、香川農試、山口農林総技セ、北海道立総研機構花・野菜技術セ、農研機構九州沖縄農研、農研機構東北農研、かずさDNA研、オイシックス(株)、三好アグリテック(株)
作成者 三重県農業研究所 北村 八祥

1 研究の背景

従来のイチゴはクローン増殖する栄養繁殖型品種であるが、前研究により新しく種子繁殖型品種「よつぼし」を開発した。種子繁殖型品種は、従来品種に比べ増殖率が格段に高く、病害虫・ウィルスの親子間伝染を回避できる。大量の無病苗を効率良く生産できるため、イチゴの種苗生産と栽培に大きな変革をもたらすことが期待できる。

2 研究の概要

種子繁殖型品種「よつぼし」の栽培体系を確立するとともに、種子やセル苗の種苗供給体制を整えることにより、種子繁殖型品種の普及体制を構築する。

3 研究期間中の主要な成果

    種子繁殖型品種「よつぼし」のセル苗を活用した2つの栽培方法と種苗供給体系を確立した。

  • 「二次育苗法」は、慣行に近い栽培方法で、種苗事業者が5月に播種したセル苗を、7月上旬に購入して鉢上げし育苗する。9月に定植することで11月から収穫できる。これにより育苗労力を30%削減する。
  • 「本圃直接定植法」は、種苗事業者から購入したセル苗を直接本圃に定植する方法で、育苗管理と育苗施設は不要となり、12月から収穫できる。これにより育苗労力を90%削減する。
  • 種子の品質保証に必要な「種子純度検定法」を開発し事業化したうえで、一連の種子生産技術と栽培方法に適したセル苗供給技術を確立し、「よつぼし」の種苗供給体制を整えた。

4 研究終了後の新たな研究成果

なし

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特願 2014-1224 イチゴ種子のDNA粗抽出液を用いたイチゴF1種子の純度検定法(磯部祥子、宮村佳典、笹本茂美:(公財)かずさDNA研究所)
  • 品種登録25605号 種子繁殖型イチゴ品種 よつぼし (三重県、香川県、千葉県、農研機構)
  • https://seedstrawberry.com/society.html

  • 森 利樹他.共同育種によるイチゴ種子繁殖型品種'よつぼし'の開発.園芸学研究14(4), 409-418 (2015).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 「よつぼし」は種苗事業者3社に品種利用許諾され、種苗の販売を2016年度から開始し、2019年度の販売数はセル苗110万株、種子97万粒に及び全国に普及した(面積 約30ha相当)。
  • 種子の純度検定法については、かずさDNA研究所により解析受託事業が開始され、種子の混種を防ぎ純度を担保する手法として、種苗事業者3社に定期的に利用されている。

(2) 実用化の達成要因

公設試と種苗会社が連携し、品種開発だけでなく種苗供給、栽培技術、さらに実証普及と一貫した研究を継続して実施したことで、生産者や消費者に受け入れられる実用的な普及体制を構築できた。

(3) 今後の開発・普及目標

3~5年後に「よつぼし」を含む種子繁殖型品種で1000万株(約142ha相当)の生産。2021年1月に民間企業から新たに2品種が発表され、さらに3年以内には複数の新品種が発表される見込み。「よつぼし」の成功により、種子繁殖型イチゴによるイノベーションが進んでいる。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

イチゴの種苗供給と栽培技術が変わることにより、経営の大規模化や他品目や他産業からの新規参入、閉鎖型植物工場での利用等、イチゴ生産の多様化が進み、国際競争力の強化に繋がる。

(25077C) 種子イチゴイノベーションに向けた栽培体系と種苗供給体制の確立