生物系特定産業技術研究支援センター
(25085C) 都市近郊野菜に光害(ひかりがい)が発生しない夜間照明技術の開発
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成25年~27年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
山口大学、株式会社アグリライト研究所、東京都農林総合研究センター |
作成者 | 山口大学 山本 晴彦 |
1 研究の背景
夜間の安全に必要な照明の漏れ光が農地に当ると、農作物への減収などの悪影響を与える光害(ひかりがい)が発生する。現在は消灯などの対応や、農家等からの意見により照明設置が進まない側面があった。
2 研究の概要
近郊農業野菜で光害被害の多いホウレンソウおよびエダマメに、光害を及ぼさないLED夜間照明の条件を解明し、近郊農業野菜に光害を生じない夜間照明装置の開発と普及を目標とした。
3 研究期間中の主要な成果
- ホウレンソウについて、光害阻止照明として、青+黄緑色LEDを組み合わせた疑似白色LEDの影響を調査した。8lxにおける可販株率は、一般照的な白色LED照明の40%未満から80%へと2倍になり、夜間照明による減収率を20%に抑えることが可能になった。
- エダマメについて、ホウレンソウ光害阻止照明と同様の疑似白色LEDの影響を調査した。15lxでの減収率を10%未満に抑えられ、夜間照明による減収のリスクを軽減することができる。
4 研究終了後の新たな研究成果
日野市に試作照明器具を4地区8ヵ所に設置し(日野市が株式会社アグリライト研究所へ依頼)、地域住民と農業生産者双方に意見聴取し、光害阻止照明についての啓発を開始したことで、光害阻止照明技術による安全な夜間交通と安定した農業生産の両立を図るモデルケースが形成されつつある。
5 公表した主な特許・品種・論文
- 原田陽子,山本晴彦,岩谷潔,園山芳充:エダマメの光害評価における効率的手法の検討,中国・四国の農業気象第27号,52-53(2014)
- 野村和輝,山本晴彦,岩谷潔,園山芳充:青色と黄緑色を混合した光によるホウレンソウの光害を低減する光源の研究,日本農業気象学会全国大会講演要旨,179(2016)
- 野口貴,海保富士男,沼尻勝人,木下沙也佳,岩谷潔,山本晴彦,園山芳充:疑似白色LEDによる夜間照明がホウレンソウの生育と抽苔に及ぼす影響,園芸学研究第16巻別冊1,105(2017)
6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
ホウレンソウ対応技術について、日野市に設置されているが、研究開発時の品種対応に限られている。 また、同一圃場はホウレンソウ以外にも他の作目も栽培することから、農業生産者の理解が必要である。
(2) 実用化の達成要因
上記(1)の状況であるなか、普及に向けての量産は、灯具メーカーによる商品化判断に左右される。
(3) 今後の開発・普及目標
研究期間中に実施した品種は、日野市近郊で多く流通している数品種を選択したが、需要が求められる新規場所においては、品種間による技術成果が異なることから技術獲得に向けて予算獲得・期間を要するが筋道について理解している。
7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
光害阻止により首都圏のホウレンソウとエダマメの産出額が各0.1%上昇、約6,200万円/年の農家収入増、全国では約1億3300万円/年の増加。防災協力農地の機能維持と、夜間交通の安全確保を照明導入で実現。