生物系特定産業技術研究支援センター

(25066C) ルーメン発酵の健全化による乳牛の繁殖性向上技術の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構畜産研究部門、宮城県畜産試験場、茨城県畜産センター、埼玉県農業技術研究センター、千葉県畜産総合研究センター、神奈川県畜産技術センター、静岡県畜産技術研究所、岐阜県畜産研究所、三重県畜産研究所、富山県農林水産総合技術センター畜産研究所、石川県農林総合研究センター畜産試験場、熊本県農業研究センター畜産研究所、宮崎県畜産試験場、信州大学農学部、全酪連酪農技術研究所、日産合成工業株式会社
作成者 農研機構 畜産研究部門 平子 誠

1 研究の背景

高泌乳牛には栄養価の高い飼料(濃厚飼料)を給与する必要がある。しかし、濃厚飼料を多給すると、急速な発酵によりルーメン液が酸性化して潜在性ルーメンアシドーシス(SARA)発症のリスクが高くなる。

2 研究の概要

ルーメンpHの常時遠隔監視システムを活用して乳牛におけるSARAの発症メカニズムを明らかにし、飼料調製あるいはエンドトキシン拮抗剤等の給与により、SARAの発症を防ぐ飼養管理方法を開発する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 初産牛の泌乳前期飼料中NFC水準は34~36%程度が相応しいこと、食品製造副産物、飼料用米、発酵TMR等の易分解性飼料を給与する際はNFC水準をやや低めに設定すべきであることを明らかにした。
  • 活性型酵母の給与はルーメン内の菌叢構成を変化させ、エンドトキシン産生菌の割合を減じ、繊維分解菌の割合を増加させることを明らかにした。また、熱感受性の高い活性型酵母のペレット化に成功した。
  • ラクトフェリンの給与は、泌乳前期のルーメン液中エンドトキシン活性値の上昇を抑え、微生物態蛋白質合成量を増加させることにより、泌乳成績と繁殖成績の両方を向上させることを実証した。

4 研究終了後の新たな研究成果

なし

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特願2017−9457 ペレット飼料及びペレット飼料の製造方法 (上地さり、伊藤稔、林峰之、江藤喜久男:日産合成)
  • Ueno, Y. et al. Effects of supplementing an active dry yeast product on rumen microbial community composition and on subsequent rumen fermentation of lactating cows in the mid-to-late lactation period. Anim. Sci. J. 88, 119-124 (2017).
  • Hasunuma, T. et al. Consecutive reticular pH monitoring in dairy cows fed diets supplemented with active dry yeast during the transition and mid-lactation periods. Anim. Feed Sci. Tech. 221, 215-225 (2016).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 2017年版日本飼養標準(乳牛)で本研究の飼養試験データを活用
  • 日産合成工業株式会社が活性型酵母ペレット化飼料の製造受託業務を実施

(2) 実用化の達成要因

適切な現場ニーズの把握と課題解決に向けた官・学・産の連携

(3) 今後の開発・普及目標

単一のグループとしては活動していないが、乳牛における生産性の向上と分娩間隔の短縮を目指し、参画していた共同研究者が複数のコンソーシアムを結成して研究を継承、発展させている。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

日本飼養標準を活用することで、高泌乳牛のルーメン発酵を安定化させ、生産病の発生を抑えつつ牛乳の生産性が向上する。その結果、安価で安全な牛乳を消費者に届けることができる。

(25066C) ルーメン発酵の健全化による乳牛の繁殖性向上技術の開発