生物系特定産業技術研究支援センター

(25069C) ウイルスフリー・クルマエビ家系の作出に関する技術開発およびその普及

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
水産研究・教育機構、宮崎大学、愛媛大学、沖縄県深層水研究所、株式会社拓水
作成者 水産研究・教育機構 菅谷 琢磨

1 研究の背景

クルマエビ養殖は国内供給の約8割を支える重要な産業であるが、ホワイトスポット病(WSD)によって年間3~4億円に及ぶ損失を被っており、業界ではウイルスフリー(SPF)種苗の確保が喫緊の課題となっている。

2 研究の概要

クルマエビのSPF親を選抜する手法とそれらからSPF種苗を継代する手法を確立するため、WSDウイルスの高感度PCR検査法と人為的な交配・成熟・産卵技術を開発するとともに、近交弱勢の影響を明らかにした。

3 研究期間中の主要な成果

  • WSDを含む5つの国際的に問題となっているウイルス病について高感度検出法を確立した。特に、WSDについてはストレス負荷によって不顕性感染を顕在化させる手法を開発した。
  • 水中のノイズがクルマエビの交接を阻害することを明らかにし、陸上水槽で交接させる手法を開発した。
  • マイクロサテライトマーカー分析によって繁殖様式を解明するとともに近交弱勢リスクの評価法を開発した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 養殖場で長期間継代された群と他の継代群との交雑群との成長と生残を比較し、継代された群では遺伝的多様性の低い個体が死亡していることを明らかにした。
  • WSDへの耐性が家系によって異なっていることを明らかにし、2つの耐病性家系を選抜した。

5 公表した主な特許・品種・論文

Karthikeyan, K. et. al. Rapid and sensitive real-time loop meditated isothermal amplification for the detection of Enterocytozoon hepatopenaei of shrimp. Aquaculture 481, 119-123 (2017).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 技術普及を行った2つの養殖会社における研究終了時から現在までの生産量が約140t増加。販売金額の増分は推定約5.6~8.4億円(市場単価4000~6000円/kgとして算出)
  • 生産が安定し、生産量が増えたことによって新たな商品の開発が可能となっている。これまでにプロトン冷凍などによる冷凍物の新製品開発が行われており、販路が拡大している。

(2) 実用化の達成要因

SPF親の選抜と継代によるSPF種苗の育成に関しては、交配手法の開発が想定以上に進んだこともあり、実用化の達成が促進された。また、養殖業者が自発的にSPF種苗を導入したことも実用化の要因となった。

(3) 今後の開発・普及目標

各地の公的機関や民間養殖場と連携し、本研究で開発した手法を用いて新たなSPF種苗を育成する。それらを用いた選抜育種及び交雑育種により、耐病性や成長に優れた品種を開発し、養殖生産を強化する。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

小型水槽での交配手法の開発によって育種研究が可能となり、近交回避手法や耐病性品種開発についての研究が進んでいる。また、技術の普及対象となった養殖場の生産量が増加し、安定供給が実現している。

(25069C) ウイルスフリー・クルマエビ家系の作出に関する技術開発およびその普及