生物系特定産業技術研究支援センター

(25012A) 鶏肉に含まれる高機能ジペプチドを用いた中高齢者の心身健康維持に関する研究

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(シーズ創出ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
日本ハム株式会社中央研究所、国立精神・神経医療研究センター、九州大学
作成者 東京大学大学院新領域創成あ科学研究科 久恒 辰博

1 研究の背景

肉類に多く含まれるイミダゾールジペプチドの心身健康維持作用を明らかにし、新たなアグリビジネスシーズを得ることを本研究の達成目標とした。

2 研究の概要

鶏肉イミダゾールジペプチド含有食品を摂取するプラセボ対照ランダム化比較試験を2回実施して(健康な中高齢者173名が参加)、その健康増進効果を認知機能検査・血液検査・脳MRI検査により評価した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 本研究では、脳の老化を感度良く定量的に評価するヒト試験システムの構築を行った。
  • このヒト試験システムを用いて鶏肉に多く含まれる高機能ジペプチドであるイミダゾールジペプチドの脳老化に対する予防・改善作用を、統計学的(P<0.05)基準に基づいて明らかにした。
  • 鶏肉イミダゾールジペプチドが脳の老化を抑えることを明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 高齢者の心身健康維持に対する新機能を発見するために、軽度認知機能低下者を研究対象者とする介入試験を実施し、イミダゾールジペプチドの摂取による認知症の発症リスクが軽減できる可能性を示した。
  • このアグリビジネスシーズ(イミダゾールジペプチド含有食品)を機能性表示食品として登録し、農林水産業(特に養鶏業)のさらなる推進に結び付けた。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特許第6588666号 (出願人:東京大学・国立精神神経医療研究センター・九州大学・日本ハム株式会社)「イミダゾールジペプチドを含む剤」
  • 機能性表示食品 2件 (届け出番号E283:はかた地どり(胸肉)/F467: イミダの力ブレイン)
  • [欧文 10報以上] Hisatsune et al. J. Alzheimer Disease 50, 149-159. (2016) など. [和文総説] 久恒辰博 「食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性」 化学と生物 54, 892- (2016)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 鶏肉イミダゾールジペプチド含有食品を、アグリビジネスシーズ(イミダゾールジペプチド高含有食品)として、機能性表示食品に届け出をしたこと。その後、販売を行っていること。
  • イミダゾールジペプチド食品の摂取により、認知症の発症リスクが軽減できる可能性を示せたこと(関連する成果を5報の英文原著論文において公表した)。

(2) 実用化の達成要因

はかた地どり(胸肉)の機能性表示食品への届出に至ったのは、福岡県の全面的なバックアップが非常に大きな寄与を果たしたが、何よりもこの届出は、農食推進事業で得られた成果がなければ、なしえなかった。

(3) 今後の開発・普及目標

新たな加工食品の開発を進め、2021年度中に機能性表示食品としての販売をスタートさせる。同時に、販路の拡大を行い、より一層の販売につなげること。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

食品成分によって、加齢による認知機能低下の改善に加えて、認知症予防への可能性を示すことができたことについては、社会的なインパクトは大きい。

(25012A) 鶏肉に含まれる高機能ジペプチドを用いた中高齢者の心身健康維持に関する研究