生物系特定産業技術研究支援センター

(26049A)ペプチド構造-活性相関を基盤とする神経系に作用する高齢者対応食品の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(シーズ創出ステージ)
実施期間 平成26年~28年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
京都大学大学院農学研究科、かずさDNA研究所、国立精神・神経医療研究センター
作成者 京都大学大学院農学研究科 大日向耕作

1 研究の背景

これまで高齢者の嚥下・咀嚼機能低下に対応した介護食品が開発されている。さらに、神経機能低下に対応した高機能な次世代食品の開発が期待される。

2 研究の概要

意欲向上・ストレス緩和(抗うつ様・抗不安様)作用および食欲促進作用を示すペプチドの構造的特徴に基づいて、食品タンパク質から迅速に機能性ペプチドを見出し、生産する技術基盤の構築を目指した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 大豆タンパク質の酵素消化物から意欲向上ペプチドを発見し、工業的製法を確立した。
  • 大豆タンパク質の異なる酵素消化物から食欲促進ペプチドを見出した。
  • 緑葉タンパク質の酵素消化物から3種類の新規ペプチドを発見し、研究手法の有効性を確認した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 民間企業が推進する意欲向上作用を示す食品の素材化・製品化を技術支援した。
  • 当該技術を活用して創薬スタートアップの医薬品開発を技術支援した。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • Mori Y et al. Characterization of soy-deprestatin, a novel orally active decapeptide that exerts antidepressant-like effects via gut-brain communication. FASEB J. 2018 Feb;32(2):568-575.
  • Kimura S et al. Identification of Rubisco anxiolytic-like peptides (rALPs) by comprehensive analysis of spinach green leaf protein digest. Biochem Biophys Res Commun. 2018 Nov 10;505(4):1050-1056.
  • Nalato J et al. Soy-ghretropin, a novel ghrelin-releasing peptide derived from soy protein. FEBS Lett.
    2016 Aug;590(16):2681-9

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 民間企業から意欲向上作用を示す機能性食品「冴えるダイズ」が上市された。
  • 当該技術を活用して複数の民間企業の社会実装を技術支援した。

(2) 実用化の達成要因

目指す方向性に関して、社会実装能力の高いパートナーに共感して頂くことが重要と考えている。一方、我々は機能性物質の構造上の特徴についてデータを蓄積し当該分野の技術力向上を推進した。結果、ニーズを熟知しているパートナーと密に連携することができ迅速な実用化につながった。

(3) 今後の開発・普及目標

    当該技術の中核は、食品分子の構造-活性相関情報を蓄積・活用することにより多様な農林水産資源の潜在的な機能性を引き出すことである。今後、さらに本技術を深化させ応用範囲を拡大するとともに新規市場を創出し、世界的高齢化・気候変動など地球規模の問題解決を図る。キャッチフレーズは「食を見つめ食を活かす」である。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

機能性素材開発の迅速化とコストダウンをはかる。超高齢社会対応に対応した新しい市場を創出する。コロナ禍で高まったメンタルヘルスへの不安の解消を目指した素材を開発する。植物性素材の活用によるSDGs達成への貢献する。食の潜在機能に着目することにより発見した新しい作用機構に基づく画期的な新薬の開発に貢献する。