生物系特定産業技術研究支援センター

(c046)アスパラガス疫病をはじめとする連作障害の総合的な診断及び対策技術の開発

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年~30年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
酪農学園大学、秋田県立大学、福島県農業総合センター、長野県野菜花き試験場、片倉コープアグリ株式会社
作成者 農研機構中日本農業研究センター 浦嶋泰文

1 研究の背景

アスパラガス産地において、改植時に土壌病害や排水不良による障害が問題となり、生産性が低下している。そのため、適切な防除対策が可能となるアスパラガス連作障害の総合的な対策が必要となっている。

2 研究の概要

アスパラガス疫病をはじめとする土壌病害について、総合的防除体系に基づく対策マニュアルを作成・普及させ、それに応じた対策を講じることにより、アスパラガスの効率的な改植を促進し増収を図る。

3 研究期間中の主要な成果

  • 亜リン酸肥料施用による生育改善: 土壌環境を整えるために、改植時から亜リン酸粒状肥料を施用し、アスパラガス生育を旺盛にすることで、疫病による枯死株の発生を軽減することが可能となった。
  • 排水性診断手法及び排水性改善対策 : 生産者でも実施可能な圃場の簡易下層透水性手法を確立し、排水評価の有効性を確認した。排水性診断フロー図を作成し圃場条件に応じた排水改善対策メニューを選 択できるようにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

アスパラガス疫病等をはじめとする連作障害総合対策マニュアル(技術者向けと生産者向けの2種類)を作成し農研機構のHPにて公開
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/129920.html

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 畑有季他.アスパラガス土壌病害の生物検定による診断手法の開発.北日本病害虫研究会報68, 90-96 (2017)
  • 台丸谷涼他.管理が異なる2ほ場におけるアスパラガス疫病の発生推移.北日本病害虫研究会報69, 50-54 (2018)
  • 石川美友紀他.アスパラガス主要産地における生育不良土壌の実態.日本土壌肥料学雑誌93(1),40-45 (2022)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 亜リン酸肥料施用による生育改善:アスパラガス疫病発生地域(長野県北信地域)の2つのJAにおいて育苗時の育苗培土への亜リン酸肥料の施用または定植時の亜リン酸資材の処理が徹底されている。
    普及面積(新改植面積) : 令和元年6.5ha、令和2年5.8ha
  • 排水性診断手法及び排水性改善対策:長野県内の排水不良畑における簡易診断(アスパラガス以外を 含む)が実施されている。50カ所×約10a/ほ場=約500a 程度、普及合計面積は約900aと推察される。

(2) 実用化の達成要因

一定の地域を対象として条件を絞った上で普及を促進した。条件を絞った地域を対象としたことで一定の成果は認められたと推察される。

(3) 今後の開発・普及目標

特に設定していない。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

アスパラガス疫病発生による欠株増加による耕作放棄の抑制が進むことによりアスパラガス生産が維持できることとなった。