生物系特定産業技術研究支援センター

(c209)西日本のタマネギ産地に深刻な被害を及ぼしているべと病の防除 技術の開発と普及

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年10月~令和元年9月(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
佐賀県農業試験研究センター、佐賀大学、農研機構九州沖縄農業研究センター、 佐賀県上場営農センター、兵庫県立農林水産技術総合センター、佐賀県農業技術防除センター
作成者 佐賀県農業試験研究センター 井手洋一

1 研究の背景

近年、西日本のタマネギ産地において多発傾向にあり、平成28年春に大発生し、著しく減収を招いた「べと病」の被害を封じ込めることができる効果的な防除体系を開発する。

2 研究の概要

タマネギべと病の発生生態、主要感染時期等を明らかにするとともに、一次感染期、二次感染期における有効な薬剤防除技術を開発した。また、土壌中による菌密度低減対策として夏期湛水の有効性を確認した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 新技術を組み合わせたタマネギべと病の総合防除体系を対策マニュアルとして提示した。
  • 一次感染を(11~12月)防ぐ手段として、移植前後のCAA剤散布の有効性を明らかにした。
  • 二次感染(3~4月)対策として、マンゼブ剤の予防散布体系の有効性を明らかにした。
  • 収穫後における土壌中の菌密度低減対策として、夏期50日間湛水の有効性を明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

薬剤散布方法と防除効果との関係性について検討し、ブームスプレヤーを用いた防除では、ノズルバーの高さが薬液付着や防除効果に影響することを明らかにした。

5 公表した主な特許・品種・論文

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 本事業により開発したCAA剤等を中心とした一次感染対策技術、マンゼブ剤の予防散布を中心とした二次感染対策技術は、佐賀県、兵庫県を中心に広く普及した(約3000ha)。
  • 夏期50日湛水による土壌中の菌密度低減対策は、水田を利用したタマネギ圃場のうち、約800haに普及した。

(2) 実用化の達成要因

タマネギべと病対策が産地存続に係る喫緊の課題であったことや、開発技術が比較的低コストで生産農家が容易に取り組める防除技術であったことが、広範囲の普及につながったものと思われる。

(3) 今後の開発・普及目標

本事業で開発した新たな防除対策技術でべと病を抑え込むことができているが、薬剤散布回数低減技術が新たに求められており(現行の2/3程度の回数が目標)、今後の検討課題である。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

べと病を封じ込めることができる有効な防除技術の普及により、本病の被害に悩まされることなく生産ができるようになったことで、消費者にタマネギを安定供給できるようになった。