生物系特定産業技術研究支援センター

(c057)β-クリプトキサンチンの供給源となる国産カンキツの周年供給技術体系の実証

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年~30年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構(九州沖縄農業研究センター、果樹茶業研究部門)、静岡県農林技術研究所果樹研究センター、 三重県(農業研究所紀南果樹研究室、紀州地域農業改良普及センター)、山口県農林総合技術センター、福岡県農林業総合試験場、佐賀県果樹試験場、長崎県農林技術開発センター、ながさき西海農業協同組合、 大青工業株式会社、シブヤ精機株式会社、熊本県(農業研究センター、天草広域本部農業普及・振興課)、大分県農林水産研究指導センター農業研究部果樹グループ、学校法人四国大学、山口大学、同志社女子大学、 山口県農林水産部柳井農林水産事務所
作成者 農研機構果樹茶業研究部門 根角博久

1 研究の背景

国内産地では担い手不足、気象変動の極端化への対応など解決すべき問題は多く、国産カンキツの競争力強化のため、国産果実の強みを活用して、消費者ニーズに過不足なく高品質果実を供給する必要がある。

2 研究の概要

高品質なカンキツ果実の安定生産技術、病害虫防除技術、鮮度保持技術、ロボット選果技術により、ウンシュウミカンおよび中晩生カンキツ新品種を用いた国産果実周年供給のための技術を開発・体系化する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 品種選択、マルドリ方式栽培技術および浮皮軽減・貯蔵技術により、機能性成分のβ-クリプトキサンチン高含有の高品質なウンシュウミカン果実を9月中旬から4月上旬までリレー出荷できることを明らかにした。
  • 中晩生カンキツ「みはや」「あすみ」「せとみ」などの導入と栽培、貯蔵技術により、11月中旬から8月中旬まで供給でき、β-クリプトキサンチン高含有の高品質な国産カンキツを周年供給できることを明らかにした。
  • ロボット搭載型プレ選果システムを試作し、本選果ラインと統合した選果システムにより、農家の家庭選果労力を軽減できることを明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 久永絢美ら. 主要産地のウンシュウミカンに含有されるβ-クリプトキサンチン量の品種群間差およびその糖度との関連について. 園芸学研究17(4):459-464(2018)
  • 山家一哲ら.カンキツ貯蔵用青色LED付設カートラックによるGP剤散布'寿太郎温州'果実の腐敗軽減効果の実証.静岡県農林技術研究所研究報告13:43-49 (2020)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • ウンシュウミカンの機能性表示登録は22件(令和3年10月時点)。
  • 新品種・マルドリ方式栽培技術の普及面積は「みえ紀南1号」で28ha(三重県)、「みはや」で7.2ha(熊本県)である、
  • 農地環境推定システムによる病害虫防除支援 : 800haを対象に実施した(佐賀県)。
  • 「せとみ」(山口県)、晩生ウンシュウ(静岡県)、早生ウンシュウ(長崎県)で貯蔵技術の活用を推進した。
  • 腐敗果除去選果ロボット1台(静岡県)やプレ選果施設(長崎県)導入された。
  • ii~vの技術体系の導入実証を、51haの整備園地を対象に実施した(JAながさき西海)。

(2) 実用化の達成要因

技術と実証事を取りまとめるとともに、普及機関とも連携して技術導入を推進した。また、スマート農業技術の開発・実証プロジェクトで体系的に実証を推進、併せてシンポジウムや研修会を開催した。

(3) 今後の開発・普及目標

気象の変動に対応するデータ駆動型の技術体系を確立して、全国の産地での活用されることが目標となる。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

マルドリ方式栽培が可能な大規模な園地整備が進められており、産地を支える技術体系とて活用されるとともに、機能性成分高含有な国産の高品質カンキツが周供給されるようになることが期待される。