生物系特定産業技術研究支援センター

(c080)自給飼料を活用した豚肉・鶏肉・鶏卵の差別化技術および低コスト生産技術の開発

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年~30年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構畜産研究部門、農研機構食品研究部門、農研機構中央農業研究センター、山形県農業総合研究センター養豚試験場、 岩手県農業研究センター畜産研究所、株式会社フリーデン、長野県畜産試験場、岐阜県畜産研究所、日本大学生物資源科学部、新潟大学、愛知県農業総合試験場、徳島県農林水産総合技術支援センター、千葉県畜産総合研究センター、山梨県畜産酪農技術センター、東京農工大学、福岡県農林業総合試験場
作成者 農研機構畜産研究部門 村上斉

1 研究の背景

TPPやEPAなどの国際的な輸出入自由化の流れの中にあっては、養豚・養鶏農家も収益力を向上させ、競争力を強化することが重要である。そのためには、飼料用米や低未利用地域飼料資源などの自給飼料を活用した輸入品と区別可能な特色ある畜産物の生産技術を確立する必要がある。

2 研究の概要

輸入飼料であるトウモロコシに比べて自給飼料である飼料用米やエコフィードが有する特徴的な成分の機能性などを活用して、飼料費の削減などにより生産コストの低減を図るとともに、豚肉、鶏肉や鶏卵などの生産物の差別化・高品質化により収入の増加も図り、養豚・養鶏農家の競争力強化につなげる。

3 研究期間中の主要な成果

  • 飼料用米と酒粕の利用により生産コストを削減し、リノール酸が少なくオレイン酸に富む豚肉を生産する。
  • 飼料用米の利用により鶏肉の生産コストを削減し、初生時から雛に給与することで成長を促進させ、育成率も改善される。
  • 飼料用米の利用により卵黄中のビタミンE含量が高く、半熟卵黄やカスタードプディングとした場合、あっさりとした風味でしっかりとした食感となる、特色ある鶏卵を生産する。

4 研究終了後の新たな研究成果

鶏卵の官能評価法に関するワークショップを開催し、都道府県における鶏卵の官能評価研究の進展に貢献している。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • Sasaki K. et al. Descriptive sensory traits of cooked eggs laid from hens fed rice grain. J.Poultry Sci.56,231-235(2019).
  • 中島郁世他.慣行肥育とトコトリエノール高含有飼料用米「オオナリ」給与肥育における豚肉質の保存性の比較.日本養豚学会誌57,1-13 (2020).
  • Nanto-Hara F. et al. Effects of dietary brown rice on the growth performance, systemic oxidative status, and splenic inflammatory responses of broiler chickens under chronic heat stress. J.Poultry Sci.58,154-162(2021).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 初生雛の成長促進については飼料用メーカー(昭和産業)が本技術を基に飼料用もみ米を用いた製品を開発し、実用的に現場で使用されている(https://www.showa-sangyo.co.jp/pro/feed/product01/)。
  • 採卵鶏への飼料用米(籾米)の利用は、成果発表会やホームページによる情報発信や稲作農家と採卵農家(自家配農家)のマッチングなどを行うことにより進んでいる。

(2) 実用化の達成要因

水田フル活用に向けた稲作農家に対する飼料用米作付けへの助成制度と栽培調整技術などの開発により、低コストの自給飼料生産が可能となったことが主要因と考えられる。

(3) 今後の開発・普及目標

飼料用米の生産・利用拡大を目指す。そのためには、流通飼料を製造する飼料用メーカーにより、通年、一定量を利用できることが大切であり、飼料用米を通年安定的に供給できる仕組みを考える必要がある。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

わが国の水田フル活用という施策を後押しする行政ニーズに対応した成果であるが、生産者の収益力を向上させるだけでなく、家畜の健全性向上や畜産物の高付加価値化に繋がる点では、消費者ニーズに対応した成果でもある。