生物系特定産業技術研究支援センター

(c111)養殖ブリの輸出を促進するための人工種苗生産技術高度化及び高品質冷凍流通技術体系の開発

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年~30年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
鹿児島大学、水産研究・教育機構他
作成者 水産研究・教育機構 水産技術研究所 藤浪祐一郎

1 研究の背景

我が国の主要輸出産品である養殖ブリは種苗を安定的に確保できないため、4定(定時・定量・定質・定価)の生産ができない。また、冷凍により血合筋の変色(褐変)が生じるため、冷凍での輸出販路が限定されているのが現状である。

2 研究の概要

種苗の通年供給体制を構築するため、成熟期を人為的に制御して年間を通じて採卵できる技術を確立する。また、水揚げ時の激動抑制、魚体処理の高速化、低温保存等で褐変を抑制する冷凍技術を確立する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 水温や日長時間の制御で1年を通じて採卵する技術を確立した。採卵と種苗生産の技術を事業を通じて鹿児島県内に技術移転し、鹿児島県内でブリ人工種苗を安定的に生産・供給することが可能となった。
  • 水揚げ用のタモに通電することでブリを鎮静化させる装置を開発し、商品化した。この装置の使用により、身質の低下を防ぐだけでなく、活〆作業を安全かつ迅速に行うことが可能となった。

4 研究終了後の新たな研究成果

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 木村郁夫.生体内ATPを利用した高品質冷凍水産物の製造・流通技術の開発.日本水産学会誌,84(5),780-783(2018).
  • Mushirobira, U. et al. Hepatic expression profiles of three subtypes of vitellogenin and estrogen receptor during vitellogenesis in cultured female yellowtail. General and Comparative Endocrinology 113612 (2020).
  • 特許第6525197号「鎮静水揚げ方法」ニチモウ株式会社・鹿児島大学(2019年)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 水産研究・教育機構がブリ人工種苗と受精卵の有償配布を開始した。また、技術普及の結果として県の水産試験場や関連団体、民間企業等でブリの人工種苗生産数量が増加した。
  • 開発した技術を製品化し、21か所のぶり類養殖業者、8か所の定置網漁業者他、合計57台(2021年末までに)が日本全国で使用されている。これにより養殖業においては水揚げ時に激動を抑制するための鎮静化 技術が、定置網漁業においては従来実施できなかった漁獲直後の活〆を実施するための鎮静化技術が普及した。また、タモ網を用いない取り上げ方法にも対応するため、マット式鎮静化システムも開発した。

(2) 実用化の達成要因

計画段階から国内のニーズを把握し、事業の対象地域のみならず、開発した技術が即座に社会実装できる体制をとっていた。

(3) 今後の開発・普及目標

人工種苗に関しては、技術の高度化を進めるとともに、技術研修等を通じて積極的に普及を図る。電気タモ等については、各社の販促活動を通じて普及を図る。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

ブリ養殖業は関連産業が多く、雇用の創出といった地域経済への貢献度が高い。養殖ブリの輸出が拡大し生産量が増えることは経済効果だけでなく、過疎化が進む漁村コミュニティの維持にも貢献するものである。