生物系特定産業技術研究支援センター

(53) コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究

事業名 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業
実施期間 平成27年~28年(2年間)
研究グループ
(研究終了当時)
森林総合研究所、北海道立総合研究機構林業試験場、宮城県林業技術総合センター、長野県林業総合センター、岐阜県森林研究所、新潟県森林研究所、静岡県農林技術研究所、富山県農林水産総合技術センター、石川県農林総合研究センター、島根県中山間地域研究センター、岡山県農林水産総合センター、高知県立森林技術センター、徳島県立農林水産総合技術支援センター、福岡県農林業総合試験場、長崎県農林技術開発センター、大分県農林水産研究指導センター、宮崎県林業技術センター、東京大学、東京農業大学、信州大学、九州大学、宮崎大学、鹿児島大学、(株)住友林業式会社、(株)東北タチバナ
作成者 森林研究・整備機構 森林総合研究所 梶本 卓也
連絡先 森林総合研究所 植物生態研究領域 樹木生理研究室長 飛田博順
電話 : 029-829-8219
メール : tobi[アット]ffpri.affrc.go.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

国産材の供給力倍増等による林業の成長産業化には、成熟した人工林の主伐-再造林の促進が必要だが、その障害となる再造林コストを削減するためには、新たな効率的な施業技術の開発が求められている。

2 研究の概要

再造林コストの削減を目指して、コンテナ苗の生産・植栽技術を開発し、コンテナ苗を活用した効率的な主伐ー再造林の一貫作業システムの方法を提案する。

3 研究期間中の主要な成果

  • スリット入りの新型マルチキャビティコンテナを開発し、効率的なコンテナ苗生産に寄与した。
  • 近赤外光の分光特性を利用した新しい充実種子の選別技術を開発した。
  • 全国のコンテナ苗植栽試験データをHP上で公開し、地域に応じた植栽技術の確立の基盤を整備した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 意匠登録:スリット入りの新型マルチキャビティコンテナ(育苗容器)(意匠権者 : 東北タチバナ)
  • 近赤外光を利用した充実種子の選別技術(特許出願中)は、分光器や種子の駆動装置等と組み合わせて、充実種子の自動選別装置開発に至った。
  • Matsuda O,Hara M,Tobita H, et al. Determination of seed soundness in conifers Cryptomeria japonica and Chamaecyparis obtusa using narrow-multiband spectral imaging in the short-wavelength infrared range. PLOS ONE 10(6), (2015).

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 新型マルチキャビティコンテナは、販売実績が約20万枚(販売後3年間)に達し、当初の目標値(10万枚)を大きく上回った。

(2) 実用化の達成・普及の要因

新型コンテナの開発は、林野庁が再造林の際にコンテナ苗の利用を推奨し、コンテナ苗の導入に積極的な県苗組等も増えてきたことなどが、本コンテナの実用化とその後の普及を後押しした。

(3) 今後の開発・普及目標

近赤外光を利用した充実種子選別技術は、スギやヒノキ等造林用の樹木以外にも、造園用の広葉樹類、さらには果樹や野菜などの種子にも適用できる可能性が十分高く、その応用技術の開発が求められる。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

伐採後の再造林に欠かせない充実種子やコンテナ苗の効率的かつ安定した供給が確立されることで、林業の活性化が図られ、雇用の創出で人手不足の解消等、とくに山村地域の振興につながると期待される。

コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究