生物系特定産業技術研究支援センター

(22029) 花粉症対策ヒノキ・スギ品種の普及拡大技術開発と雄性不稔品種開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成22年~25年(4年間)
研究グループ
(研究終了当時)
森林総合研究所林木育種センター、神奈川県自然環境保全センター、福島県林業研究センター、茨城県林業技術センター、群馬県林業試験場、埼玉県農林総合研究センター、千葉県農林総合研究センター、東京都農林水産振興財団東京都農林総合研究センター、山梨県森林総合研究所、静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター、岐阜県森林研究所、宇都宮大学
作成者 神奈川県自然環境保全センター 齋藤 央嗣
連絡先 神奈川県自然環境保全センター 齋藤 央嗣
電話 : 046-248-0321
メール : saito.i34t[アット]pref.kanagawa.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

ヒノキ少花粉品種が選抜され、採種園等で普及に向けた活用が進められている。一方で、ヒノキは難着花性であり、事業ベースでの活用については未だ確立されていない。そこで普及に向けた事業ベースでの着花手法について確立を行うとともに、採種園造成に予定されているヒノキ少花粉品種の種子の早期供給技術の確立を図る。

2 研究の概要

本課題では、採種園造成によるヒノキ少花粉品種の種子の早期供給技術の確立を図るため、複数のクローンに対して、複数のジベレリン処理方法を試験し、着花量及び薬害について評価することにより、着花手法や採種園の管理について事業ベースでの普及の要領の策定に向けた検討を行った。

3 研究期間中の主要な成果

  • ジベレリンペーストによる着花性向上手法を確立し、少花粉ヒノキ採種園での種子生産が可能になった。
  • 少花粉 ヒノキミニチュア採種園※におけるカメムシ防除ネットによる種子生産性向上を検証
  • ヒノキ少花粉品種の種子を早期供給する技術についてのマニュアルを作成

※小型の採種木による種子生産林で、種子生産までの期間が短いことが特徴

4 研究終了後の新たな研究成果

終了後、ジベレリンペーストによるヒノキ着花促進処理が適用拡大され一般化され、普及段階となっている。

公表した主な特許・品種・論文

中村健一・奈良雅代・西澤敦彦(2015) ミニチュア採種園における少花粉ヒノキ品種の早期着花手法の検討 関東森 林研究66(1)

中村健一(2018) シリーズ:各都道府県の林業・林産業と遺伝育種の関わり(18)東京都(森林遺伝育種7(1))

畑尚子(2019) 少花粉ヒノキ小型木における早期種子生産技術の確立(JATAFFジャーナル1月号)

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

花粉症対策ヒノキの種子生産手法として関東中部の各都県に普及しており、少花粉ヒノキミニチュア採種園として茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、山梨の7都県で導入されている。またミニチュアではないが既存の方式の少花粉採種園が神奈川、静岡の2県、あわせて9都県で導入、普及している。

(2) 実用化の達成・普及の要因

普及が各都県に進んだ理由として、ミニチュア採種園は少花粉苗木を普及する技術として容易で早期に種子生産が可能であり、各都県に普及が進んだものと考えられる。

(3) 今後の開発・普及目標

少花粉ヒノキミニチュア採種園、少花粉ヒノキ採種園は、すでに関東中部の主要な各都県に導入されており、今後はそこから生産した種子による苗木生産量の増大を目指す。3~5年後には、導入各都県の種子生産により当初1県のみであった花粉対策ヒノキ苗の生産が苗生産全体の1割以上となる見込である。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

将来、花粉対策苗木の割合が半分以上になれば花粉量が軽減すると期待されており、東京都では花粉症患者の割合が2人に1人と推定されていることから、効果が発揮されれば、国民生活への貢献はきわめて大きい。

コンテナ苗を活用した低コスト再造林技術の実証研究