生物系特定産業技術研究支援センター

(56) 優良アコヤガイの導入等による真珠品質の向上と安定化の実証研究

事業名 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業
実施期間 平成26年~27年(2年間)
研究グループ
(研究終了当時)
水産研究・教育機構増養殖研究所、三重県水産研究所、愛媛県農林水産研究所、豊橋技術科学大学、愛媛大学
作成者 水産研究・教育機構増養殖研究所 正岡 哲治
連絡先 水産研究・教育機構 増養殖研究所 育種研究センター ゲノム育種グループ 正岡 哲治
電話 : 0596-58-6411(代表) / 0596-58-6412(直通)
メール : tmasa[アット]fra.affrc.go.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

真珠の販売促進を通じた真珠産業の発展には、高品質のアコヤガイ真珠を効率よく生産し、消費者に対する信頼を獲得してブランド化していく必要がある。

2 研究の概要

優良アコヤガイ(優良母貝や優良ピース貝)を用いて三重県や愛媛県の真珠養殖現場で真珠を試験生産し、専門家が価格を評価した。また、真珠の重要品質を計測できる真珠品質計測システムの試作機を作製した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 貝殻を閉じる力(閉殻力)で選抜した優良母貝を用いて、三重県の各養殖漁場で真珠を試験生産したところ、商品価値のある真珠の割合が約5%向上等し、真珠養殖業者の収益増加(約25~28%)が見込まれた。
  • 貝殻真珠層を基に選抜した優良ピース貝を用いて、愛媛県の各養殖漁場で真珠を試験生産したところ、商品価値のある真珠の割合が約5%向上し、真珠養殖業者の収益増加(約9%)が見込まれた。
  • 重要な真珠品質(実体色、干渉色、巻き、光沢(テリ))の計測(数値化)と、計測結果を基に自動搬送・選別する真珠品質計測システムの試作機を作製した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 平成28年度から「革新的技術開発・緊急展開事業(うち先導プロジェクト)」において、真珠業界の協力も得て赤変病耐性の選抜技術の開発と育種素材の開発を進め、アコヤガイ母貝のさらなる改良に取り組んでいる。現在、選抜した母貝(育種素材)を作出中である。
  • 上記事業で、真珠業界の協力も得て真珠品質に基づいた選抜技術の開発と育種素材の開発を進め、アコヤガイピース貝のさらなる改良に取り組んでいる。現在、選抜したピース貝(育種素材)を作出中である。
  • 上記事業で、真珠業界の協力も得て測定精度の向上や測定時間の短縮及び安価なシステムの構築のため、真珠品質計測システムのさらなる改良に取り組み、成果が出つつある。

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 三重県水産研究所から開発技術が移転された三重県栽培漁業センターにて、大量の優良母貝種苗(約100万~184万個)を生産し、真珠養殖業者に販売している。
  • 愛媛県農林水産研究所水産研究センターが、大量の優良ピース貝種苗(約30万~67万個)を生産・販売し、真珠養殖業者に供給している。

(2) 実用化の達成・普及の要因

優良母貝や優良ピース貝を使用して生産した真珠の評判が良く、また、優良ピース貝を用いて生産した真珠が、愛媛県浜揚真珠品評会で最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞したため、評価が高まった。

(3) 今後の開発・普及目標

今後も優良母貝種苗と優良ピース貝種苗を販売する。また、真珠業界の優良母貝や優良ピース貝に対する要望は高いため、本事業で得られた成果を基に、アコヤガイ母貝とピース貝のさらなる改良に取り組む。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

世界中の人々に高品質で美しいジャパンパールを提供し、わが国の真珠産業の健全な発展及び心豊かな国民生活の実現に貢献する。

優良アコヤガイの導入等による真珠品質の向上と安定化の実証研究