生物系特定産業技術研究支援センター

(64) 養殖ブリ類のストレスレス水揚げシステムと大型魚全自動高速魚体フィレ処理機開発

事業名 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業
実施期間 平成26年~27年(2年間)
研究グループ
(研究終了当時)
鹿児島大学水産学部、ニチモウ(株)、東洋水産機械(株)、黒瀬水産(株)、鹿児島県水産技術開発センター
作成者 鹿児島大学 木村 郁夫
連絡先 鹿児島大学 産学・地域共創センター 木村 郁夫
電話 : 099-285-7198
メール : kimura[アット]fish.kagoshima-u.ac.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

養殖ブリ類海外市場が拡大しているが、厳しい現場作業で労働作業の非効率性や鮮度維持およびグローバル冷凍流通(-20°C)での品質維持に課題がある。本研究開発ではこれらの課題解決に取り組んだ。

2 研究の概要

水揚げ時のストレスを低減する電気刺激鎮静化装置および高速活きしめ機、高速自動魚体処理機(ヘッドカッター、内臓除機)の開発、冷凍貯蔵流通時の血合肉の褐変化抑制技術の開発を行った。

3 研究期間中の主要な成果

  • 水揚げ時に電気刺激鎮静化を行うと、条件によっては背骨が骨折し製品品質への影響が問題となったが、10尾程度のブリの電気刺激により90秒程問題無く鎮静化可能となるプロトタイプシステムを開発した。
  • 活き〆機(1800尾/時)は実用機として完成した。高速ヘッドカット・内臓除去機は1500尾/時の処理能力を示すプロトタイプの装置として開発された。これらの装置による省人化効果は非常に大きいことを確認した。
  • 活き〆後のATP濃度の経時変化には水揚げ時のストレスが影響することを確認した。高濃度のATPを含むATPブリでは-20°Cで褐変が約3ヶ月抑制され、CO処理なしにブリのグローバル冷凍流通が可能となった。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 水揚げ時に40~50尾を一度に鎮静化するための最適電気刺激条件等の確認を行い、多量に処理しても背骨骨折率1%未満の電気刺激鎮静化システム(電気刺激装置、電気刺激専用タモ)の開発をおこなった。
  • 「高速ヘッドカッター」: カット位置決め機構等改良して処理速度は向上し実用機レベルとなった。「高速内臓除去機」: 簡便な機器清掃が可能な仕様とし、開腹位置精度を向上させた実用機装置として完成させた。
  • 養殖場毎に水揚げ方式が異なるため活き〆後のATP濃度変化に影響を受けることから、ATPブリの生産管理方法は養殖場毎に検討が必要である。ATPブリの品質はEUおよび北米で高品質であると評価された。

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 電気刺激鎮静化システムは6養殖場に導入された。高速内臓除去機は9養殖場に導入された。
  • ATPブリの平成30年度におけるEUへの輸出実績は約27tである。

公表した主な特許・品種・論文

  • 特開2017-018028 鎮静水揚げ方法 (伊藤 翔 他3名 ニチモウ(株)、木村 郁夫 鹿児島大学)
  • 特願2018-510639 魚体の内臓除去方法及びその装置 (塚越 智頼、打田 崇 東洋水産機械(株))

(2) 実用化の達成・普及の要因

開発装置・技術が養殖ブリの冷凍輸出を拡大するために必須なものであった。本プロジェクト終了後に「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」で採択され、実用に耐える技術・装置として完成できた。

(3) 今後の開発・普及目標

電気刺激鎮静化システムについては、ブリに限らず他の養殖魚種や漁業現場への販売を目指す。高速魚体処理機については、高速ヘッドカッター、内臓除去機の販売拡大を目指す。ATPブリの製造技術の普及を行う。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

高品質な養殖ブリの輸出拡大は、養殖経営体の経営状況を改善するのみならず養殖地域の経済に大きく貢献する。併せて、本技術は養殖ブリの品質維持に貢献するので、高品質ブリの提供が可能になる。

優良アコヤガイの導入等による真珠品質の向上と安定化の実証研究