生物系特定産業技術研究支援センター
(23048) 遊休クルマエビ養殖池を活用したアサリ増養殖技術の開発
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成23年~25年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
山口県水産研究センター、水産研究・教育機構 水産大学校、(株)東京久栄、(株)松本微生物研究所 |
作成者 | 山口県水産研究センター 岸岡 正伸 |
連絡先 | 山口県水産研究センター 岸岡 正伸 電話 : 083-984-2116 メール : kishioka.masanobu[アット]pref.yamaguchi.lg.jp 水産研究・教育機構 水産大学校 山﨑 康裕 電話 : 083-286-7435 メール : yamasaky[アット]fish-u.ac.jp (株)東京久栄 柿野 純 電話 : 048-268-1600 メール : kakino[アット]tc.kyuei.co.jp ※[アット]を@に置き換えてください |
1 研究の背景
我が国のアサリ漁獲量は激減しており、海外からの輸入に依存している状況にある。また、山口県のクルマエビ養殖業は低迷し、広大な養殖池が遊休化している。
2 研究の概要
アサリ2mm種苗を低コストで生産する技術を開発するとともに、種苗を遊休化したクルマエビ養殖池に収容して施肥することで粗放的にアサリを増養殖するシステムを開発する。
3 研究期間中の主要な成果
- 2mm種苗を池入れする前に池を干し上げ、かつ継続的に施肥を行うことで緑色微細藻類を増殖させて透明度を抑制するとともに桁網で海底面を攪乱することで育成環境を維持し、高歩留りでアサリを育成した。
- 0.5haの遊休池での年間経費(管理職員の人件費や施設の減価償却費を除く)は490万円であり、売上は種苗販売と成貝販売をあわせて750万円と見積もられた。
- 赤潮プランクトン(ヘテロシグマ)に多く含まれる酸性糖(アルギン酸)がアサリの成長を促進し、その最適な添加濃度が4mg/Lであることを確認した。
4 研究終了後の新たな研究成果
- 肥料を格安のたい肥(発酵鶏糞)に変更し、たい肥に食品残渣を原料とした格安の養豚用飼料粉末を13%添加することで肥満度を維持し、生産コストを大幅に削減した。
- 0.5haの養殖池で実施した養殖技術を1.5haの海水池で再現し、同様の結果が得られたことで技術の再現性や大規模化が可能であることを実証した。
- アサリを効率よく回収するため、漁業者と共同で曳走式噴流式ジョレン(能力:500kg/hrs)を開発した。
5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
2mm種苗を20mm以上に大量育成し、高効率で回収、放流する一連の技術を用いて、実地規模で母集団造成のための保護放流を続けた結果、山口県の漁獲量は2006年の4トンから2015年の52トンまで回復した。
(2) 実用化の達成・普及の要因
アサリは保護放流すれば順調に成育し、母集団造成や間引き漁獲に結びつくことがわかっている。本研究で開発した技術は20mm種苗の大量育成に応用可能であることから放流用種苗の生産に利用されている。
(3) 今後の開発・普及目標
アサリの増養殖を推進するため、陸上での種苗生産能力(ふ化から2mmまで)の拡充や他の遊休池を育成施設(2mmから20mmまで)として活用するための方策を検討したい。
6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
漁業者はこれまで天然種苗を放流してきた経験から定着率の高い20mm以上の種苗を冬~春に放流することを強く望んでおり、生産した種苗はこの要望に応えるものである。