生物系特定産業技術研究支援センター

(26083c) 「南予地域発」新規マグロ類「スマ」の早期種苗完全養殖システムの構築

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成26年~28年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
愛媛大学南予水産研究センター、愛媛県水産研究センター、水産研究・教育機構増養殖研究所
作成者 愛媛大学 社会連携推進機構 松原 孝博
連絡先 愛媛大学 社会連携推進機構 松原 孝博
電話 : 0895-73-7112
メール : matsu[アット]agr.ehime-u.ac.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

日本屈指の魚介類養殖基地である愛媛県南予地域において、競争力の高い新養殖対象種を導入して養殖産業の強化を図るため、商品価値の高い小型マグロ類「スマ」に焦点を当て、最新の養殖技術開発によって地域振興に寄せられる期待に応える養殖システムを樹立することを目的とした。

2 研究の概要

本研究では、1) 早期産卵誘導、親魚若齢化技術開発、2) 早期成熟に対応した種苗生産技術の開発により、南予地域の環境特性に最適化した新規マグロ類「スマ」の完全養殖システムの基盤を構築した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 愛媛の海面生簀での産卵期よりも2-3ヶ月早い5月の早期産卵誘導により、目標とした「受精卵100万粒以上の獲得」を大きく上回る受精卵獲得に成功した。
  • 平成27年度に早期産卵誘導により受精卵を獲得し、それを管理・飼育して、5cm種苗約4,200尾の生産に成功した。 同種苗は養殖企業に移管され試験養殖が開始、翌年出荷された。
  • 平成26年度生産の人工魚を用いて平成28年度、早期産卵による受精卵による「完全養殖」を達成した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 農林水産省:革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)「新規マグロ類「スマ」の育種・完全養殖生産システムによる新産業創出と拡大」(平成28~31年度)により、優良親魚の選抜技術確立と種苗大量生産技術開発を進め、完全養殖スマの出荷尾数、品質共に着実な向上を達成している。
  • 文部科学省「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」(平成29~33年度)により、優良系統の育種と、それらの永久保存を目的とした生殖幹細胞バンク、またそこから優良系統を借腹生産により復元する新たな発想の「次世代育種システム」を考案し、スマでのシステム構築を進めている。

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

早期種苗の生産は平成27年度、早期完全養殖種苗の生産は当該事業実施最終年度である平成28年度に達成され、それらの種苗による試験養殖が実施された。以後、早期完全養殖種苗の生産技術、養殖技術は年々向上し、平成29年度生産群は5,000尾を上回る出荷尾数となった。

(2) 実用化の達成・普及の要因

愛媛県主導により「スマ販売戦略会議」が運営され、販路の探索、PR、イベントなどを実施した。また、販売に関して愛南漁業協同組合に窓口を一元化することで、品質管理と価格の統制、数量の掌握を行っている。

(3) 今後の開発・普及目標

完全養殖早期種苗について、2019年には20,000尾、2020年40,000尾、2021年60,000尾、2022年80,000尾生産する計画としており、2022年群では64,000尾の製品出荷を目指す。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

スマは新たな養殖マグロ類であり、その完全養殖供給は資源の減少が続く太平洋クロマグロの生産量を補完し、美味なマグロ類を求める国民の声に応えることにつながる。

優良アコヤガイの導入等による真珠品質の向上と安定化の実証研究