生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2006年度 事後評価結果

天敵の行動制御による中山間地(京都府美山町)における減農薬害虫防除技術の開発

技術コーディネーター

高林 純示(国立大学法人京都大学生態学研究センター)

研究参画機関

  • 国立大学法人京都大学生態学研究センター
  • (独)農研機構中央農業総合研究センター
  • 株式会社四国総合研究所
  • (独)農研機構九州沖縄農業研究センター
  • (独)農研機構近畿中国四国農業研究センター
  • 曽田香料株式会社

総合評価

優れている

コメント

害虫の加害を受けた時に、作物が誘導する化合物が、害虫の天敵を誘引する現象を用いて害虫の防除を行うという、世界でも例を見ない害虫防除技術の開発を目的とした本プロジェクトは概ね計画通り実施された。
コナガ加害時にアブラナ科作物が誘導する化合物の内、コナガに特異的に寄生するコナガサムライコマユバチを誘引・定着させる複数の化合物を特定し、それらの最適ブレンド比を確定した。この成果に基づき、この寄生蜂を誘引する資材ハチクールの製剤化に成功し、特許申請を行った。さらに誘引した寄生蜂の定着・増殖能力を高めるための栄養源の給餌装置ハチゲンキを開発、製品化し特許を申請している。また、これら2つの資材を組み合わせた防除試験が現地のミズナ栽培ハウスで実施され、いくつかの事例で防除効果があることが確かめられた。
一方、害虫の増殖や寄生蜂の寄生活動などを組み込んだ害虫防除の戦略モデルを構築し、ハチクール、ハチゲンキを組み合わせた防除システムの有効性のアセスメントを行い、本防除技術に科学的根拠を与えた。
問題点は、防除効果の実証例数が十分でなく、この技術によって本当に安定した防除効果が得られ、実用技術として普及しうるかどうかに疑問が残る。害虫加害植物が誘導する天敵誘引物質の作用の仕方はall or none 的ではなく、複数の要因が絡む確率的なものと思われる。また誘引化合物の有効範囲が限られること、距離が離れると最適ブレンド比が乱され、誘引効率が低下するなどの問題が生じると懸念される。このような問題点に答えるためには、異なった環境条件下で、防除試験例数を重ねる必要がある。さらに、研究成果の公表がプロジェクトの規模大きさに比べて十分ではないので学術的評価はやや劣る。