生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2006年度 事後評価結果

GLP-1発現米の糖尿病予防食品としての研究開発

研究代表者

城森 孝仁(株式会社三和化学研究所)

総合評価

当初目標を達成

コメント

血糖値に依存してインスリンを分泌する作用をもつペプチドホルモンであるGLP-1を、遺伝子組換えによりイネ品種・日本晴で高含量発現させることに成功し第6世代まで栽培した。GLP-1組換え米のGLP-1含量は、世代間や種子間で差がなかった。本組換え米を炊飯しマウスに摂食させたところ、GLP-1発現米は炊飯しても活性を失うことなく血糖上昇を抑制した。また、GLP-1レセプター欠損マウスに発現米または非発現米を炊飯し投与したところ、血糖値に差がなかったことから、GLP-1発現米の血糖低下効果はGLP-1の作用によることが判明した。このようにGLP-1発現米を利用することを目指し、商品価値のある発現米株を選抜、確定し、動物での有効性を検証するとともに、GLP-1の小腸からの吸収と吸収量を明らかにし、付加価値のある機能性米を開発したことは、評価できる。 この米が摂取可能になれば高血糖患者の福音となる可能性が高い。大腸菌での発現による大量生産の可能性もでてきた。短期のマウス試験は終了して予期した結果が得られたが、糖尿病マウスやラットでの実験は未終了である。また、長期実験は計画にはあったが行われなかった。
今後、2型糖尿病モデル動物を用いて実験を行う必要がある。疾患モデル動物を使用しての組換え米の血糖値上昇抑制作用の証明はインパクトがあるし、この組換え米の商品価値を検証する上でも不可欠かつ重要なデータであろう。また、肝心の究極のヒトへの応用に向けたin vivo系の研究成果については、未だ克服すべき点や確認すべき点が多く存在する。本研究は植物を利用した遺伝子組換え蛋白・ペプチド生成に関する領域に貢献すると考えるので、今後の学問的発展に期待したい。