生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 事後評価結果

海外輸出を狙った不活化花粉利用「種なし果物」の生産技術の開発

技術コーディネーター

杉山 慶太((独)農研機構北海道農業研究センター)

研究参画機関

  • (独)農研機構北海道農業研究センター
  • 国立大学法人高知大学
  • 高知県農業技術センター
  • 鳥取中央農業協同組合
  • ケイワン株式会社

総合評価

当初目標を達成

コメント

スイカの形状、収量を低下させずに、むしろ糖度、糖度組成などの品質を大幅に向上させる軟X線による種無し化が、学術的理論化から現地栽培面での課題解決、流通、販売過程の問題まで明らかにされており、今後新しい事業の創出が可能となる見通しがついたといえる。中でもこれまで花粉寿命が短かったスイカ花粉を1年以上有効にした点や、グリーンシーデットのように大量の花粉をつける素材を見出した点は高く評価される。「白い種のスイカ」「ダイホウビ」としての位置付けもなされており、新たなカテゴリーが実現されつつあると評価される。また文旦においても水晶文旦に関してはそれほど収量、品質を低下させずに種無し化が可能となり、高級化を狙うには充分な体制ができたと言える。今後はスイカのように市場調査、購買者調査を徹底的に行い、流通、販売経路での画期的戦略を立て、高付加価値化、差別化を進めて戴きたい。
収支目論見の点では、(1)現在20~50%高で販売されているが、市場への出回り数が少ないことによる「ご祝儀相場」なのではないか、(2)不活化花粉の利用が生産者にとって採算性の取れる技術なのか、(3)花粉販売業者の採算性、といった点について十分検討されているとは言いがたい。また、技術的な面でも、高品質種なし果実生産のための栽培技術の確立の面で、例えば3L級以上の果実の割合や秀品率が目標値に達しないなど、改善すべき点がある。本成果を将来的に新しい事業創出につなげるためには、経済性の面を含め、今後さらに検討することが必要であると考える。
研究期間が3年間と短いが、コンソーシアム全体で特許1つは少なすぎる。花粉の保存方法のみならず、スイカ以外の種無し化技術、グリーンシーデット花粉採取技術、人工授粉機の開発、商標登録など知的財産権の出願・取得に努めて戴きたい。特に海外進出を狙っており、軟X線による種無し化の輸出相手国の国際特許は是非とって戴きたい。また、論文の公表にも努めてもらいたい。