生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 事後評価結果

酵母由来中空バイオナノ粒子を用いる革新的超高感度バイオセンシング技術の開発

技術コーディネーター

谷澤 克行(国立大学法人大阪大学)

研究参画機関

  • 国立大学法人大阪大学
  • 株式会社ビークル
  • 東レ株式会社

総合評価

やや不十分

コメント

酵母が生産するバイオナノ粒子の表層に抗体タンパク質結合タグを付加することで、酵素免疫測定法(ELISA法)の一層の高感度化を可能にした。ビオチン標識したバイオナノ粒子では、ABC試薬と併用することで感度が市販キットの50倍に向上した。また、バイオナノ粒子を固相化した基板を作製して抗体を整列化させることにより、ELISA法による癌マーカーの検出感度の向上、および人口脂質膜小胞であるリポソームに蛍光ビーズを内包させてバイオナノ粒子と融合させる方法により、各種特異抗体の蛍光による可視化センシングを可能にした。さらに、酵母によるバイオナノ粒子の生産工程を改良し大量生産プロセスを開発した。今後は、開発したバイオナノ粒子による高感度センシング技術を、食品開発研究などで用いられるELISAシステムの確立やアレルゲン・異常プリオンなどの高感度検出による食品安全検査事業の創出に結びつける予定である。
しかしながら、バイオナノ粒子やその修飾分子の生産技術の開発について担当者の努力は認められるものの、実用化の可能性が示唆される段階に留まっており、目標の達成度は当初計画に比べて不十分である。今後は、実用化を図るために不可欠な優良生産株の更なる取得を含めた生産技術の改良と検証を行い、食品安全検査事業などの生物系産業創出に向けた一層の努力が必要である。また、特許出願3件は東レ株式会社を代表とするもので評価できるが、コンソーシアム全体として原著論文の発表実績が全くなく、努力不足である。