生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2008年度 事後評価結果

伝統的発酵産業を再生する革新的で安全なバイオプロセスの開発

技術コーディネーター

近藤 昭彦(国立大学法人神戸大学)

研究参画機関

  • 国立大学法人神戸大学
  • 国立大学法人京都大学
  • 月桂冠株式会社
  • 関西化学機械製作株式会社
  • 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社

総合評価

当初目標を達成

コメント

醸造微生物である酵母の細胞表層提示系の基盤技術として、マイクロキャピラリーカラムナノHPLCシステムと1万穴の酵母マイクロチップを開発し、ハイスループットスクリーニングに有効利用できることを示した成果は高く評価できる。また、酵母の細胞表層提示系が酵素剤よりも優れた反応特性を示すことを実証した成果などを得て、多数の原著論文を発表しており、学術的にも優れている。一方、麹菌については、麹菌ゲノムから45個の有用タンパク質遺伝子を迅速にクローニングした成果やダブルホモ型破壊酵母を効率よく選抜する方法(HELOH法)を確立した成果は高く評価できる。しかしながら、麹菌表層提示系の基盤技術開発としては途中段階であり、技術の確立とともに酵素剤との比較有利性を明らかにする必要がある。

この酵母の細胞表層提示系を用いて機能性の3分野(糖類、ペプチドおよび脂質)6品目の機能性食品素材の開発を試み、3品目(イソフラボンアグリコン、乳製品系フレーバー生産、γ―サイクロデキストリン)についてはPhase III(生産プロセスでの製品評価)まで進めるとした当初目標は、おおむね達成しており評価できる。特に、イソフラボンアグリコンについては上市直前までの安全性評価を行うなど、ほぼ目標どおりの成果を得ている。ただし、イソフラボンアグリコン生産に利用したBGL1酵素の酵母表層提示系ではアレルゲン残留性など検討を要する課題も残されている。GMO食品として上市するにはまだまだ時間を要するが、将来的には生物系産業の創成に寄与できるものと考えられる。また、上記3品目にはそれぞれ競合する製品・技術があるため、コスト削減が課題である。

一方、細胞表層提示系によらない(non-GMO系)機能性食品素材の開発についても進めたことは評価できるが、細胞表層提示系プロセスの効率には及ばなかった。今後これらの問題解決に向けた技術開発が望まれる。

コンソーシアム全体としては、クローニングした酵素の遺伝子のやりとり、それらの変異体のやりとりなど、参画機関の間の相互連携は十分なされている。