生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2009年度 事後評価結果

温室効果ガス抑止のための窒素バイオマス再生・浄化システムの構築

技術コーディネーター(所属機関)

若木 高善(東京大学)

研究参画機関

  • 東京大学
  • 有限会社日本ライフセンター
  • 荏原エンジニアリングサービス株式会社
  • 東北学院大学

総合評価

やや不十分

講評

本研究は、養豚場の排泄物および廃水の処理において発生する強力な温室ガスのN2Oの発生を抑止するため、基礎研究で得られた好気性脱窒細菌TR2株の特性を活かした処理技術の開発を主目的として実施された。
廃水処理活性汚泥という複雑系でのTR2株によるN2O発生抑制効果は、亜硝酸型の脱窒反応条件を維持することが必要であることを明らかにし、TR2株を補食する原生動物を失活させるために熱処理期間を長くする技術を開発した。この技術成果には、東北学院大学が中心となり開発した微生物群集解析手法が大きな貢献を果たした。また、本来目的とは異なるが、東京大学によるヒスチジンという脱窒促進物質の発見と、複雑系でのAOBの脱窒作用とN2O 発生の関係解明は、今後TR2株使用によるN2O発生抑制技術の確立にとって重要な基盤技術と考えられる。以上のようにTR2株の生残性の確保に関し、コンソーシアム内の協力のもとに一応の解決策が見出された。しかしながら、その方法論は経済性を阻む手法であり、実用化にはまだ多くの課題が残されている。
一方、超高熱堆肥化(コンポスト化)工程における超好熱細菌の存在については否定的結果に終わったが、N2O発生抑制に生ごみの混合が効果的なことを明らかにした。生ごみの地産地消にとって有効な技術として今後の展開が期待される。
学術的な評価としては、内容的にも優れた原著論文を発表したことは一応評価できるが、その数は十分でなく、参画機関間でのバラツキも大きい。技術的な評価では、実用化につながる成果が不十分であり、特許出願数も少なく、脱窒システム全体としての評価は低い。知的財産権の確保は産業化にとって極めて重要であるため、技術コーディネーターにはもっと指導力を発揮して欲しかった。研究構想の実現には基盤的な技術要素の周到な事前整備が必要であり、実用化研究の遅れが実証試験の遅延をもたらし、研究目標全体の達成度を低めたと考えられる。費用対効果も高いとは言えない。