生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2009年度 事後評価結果

こめトコトリエノールを活かす食品開発とこめアグリビジネスの展開

技術コーディネーター(所属機関)

宮澤 陽夫(東北大学)

研究参画機関

  • 東北大学
  • 日本医科大学
  • 富山県農林水産総合技術センター
  • (独)農研機構東北農業研究センター、
  • オルガノ株式会社
  • 三和油脂株式会社

総合評価

当初目標を達成

講評

本研究は、我が国の基幹作物である米の糠部に含まれる不飽和ビタミンE"トコトリエノール(T3)"の血管新生阻害作用をはじめとする健康機能・安全性の評価、T3高生産イネの育成、米糠T3製造技術の開発を行うことで、米糠T3を特徴とする特定保健用食品の開発など、新しい"米"アグリビジネスの展開を目的として実施された。
本研究のより処となる、高純度米糠T3の血管新生予防効果と安全性を細胞実験や動物実験で裏付け(東北大学)、実用化の展望を示したことは評価できる。しかしながら、高純度米糠T3に関するヒト試験では、血管新生予防の効能評価試験が未実施であった。血清脂質改善効果も期待どおりの効果を見いだせなかったが、安全性評価では大略達成できたと考えられる(日本医科大学)。基盤技術の開発では、米糠T3の高濃度分離技術と米糠T3の効率的な生産を目的としたイネ栽培技術や収穫した米の調製技術を開発し(東北農業センター)、米糠高生産性イネ系統を育成する(富山農総センター)など、農業生産場面での技術体系化に成果を収めた。また、T3製造工程で重要となる高純度米糠T3の連続分取技術を開発し、大型の実証試験装置の製作(オルガノ(株))や、高純度米糠T3の大量製造を可能にした(三和油脂(株))。
学術面の評価では、東北大学において内容的にも数的にも十分な原著論文が公表されたが、他の機関の論文数が極めて少ない。技術面では、知的財産権の取得が皆無である。知的財産権は企業にとって防波堤的役割があるので、競争力の高い企業の維持が困難になることが予想されるため、技術コーディネーターの積極的な対応が欲しかった。
以上のように、コンソーシアムの連携に努力は認められるが、研究の進捗は当初計画に比べてやや不十分であった。そのため、研究目標である米糠T3を活かした食品開発とこめアグリビジネスの展開までには至らなかった。目標達成にはさらに時間がかかる可能性が高く、格段の努力が必要である。費用対効果は全体を俯瞰してほぼ妥当である。