生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2009年度 事後評価結果

トマト機能性成分を活用した花粉症・生活習慣病対策食品の開発

技術コーディネーター(所属機関)

河田 照雄(京都大学)

研究参画機関

  • 京都大学
  • 筑波大学、
  • 財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所
  • 千葉県農林総合研究センター
  • 日本デルモンテ株式会社
  • キッコーマン株式会社

総合評価

優れている

講評

本コンソーシアムの目的である「遺伝子組換え法によらない先端的育種法を利用して、花粉症や生活習慣病に効果のある機能性成分を多く含むトマト系統の開発と、それを利用した飲食品の実用化技術の完成」は達成されており、国民病ともいえる高血圧症、肥満症及びアレルギー疾患などへの対策の一環として重要な貢献をした。
さらに、その実施過程で得られた学術的成果や開発された技術は、ほかの植物、作物などを対象とする開発研究にも活用できるものである。
具体的には、ポリフェノールのナリンゲニンカルコン高含有トマト品種を選抜し、その含量を高めるための栽培条件の検討、新品種登録を行い、そのアレルギー抑制作用を確認した。
また、アミノ酸の一種であるギャバについても、高含有トマトを選抜し、実用化のための栽培貯蔵技術を開発し、その含量がギャバアミノ基転移酵素により制御されていることを明らかにするとともに、血圧降下作用及び抗ストレス作用を動物実験によって実証した。その結果、今後、ヒト試験での有効性の確認が期待されるまでになった。
さらに、脂肪燃焼作用を有するペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体-αを活性化する新機能性成分も発見しており、その生理的機能性については、今後さらに検討が必要であるが、当初の計画を上回る研究が実施され、生物系産業の創出に重要な役割を果たすことが期待される優れた成果が得られた。
学術面では、原著論文19報でしかもインパクトファクター2以上の雑誌が11報と顕著な成果を上げた。また、技術開発面では、有用品種の選抜、栽培及び貯蔵技術並びに有効成分の分析及び評価法を開発し、特許申請及び植物品種登録並びに遺伝子配列及びマイクロアレイデーターのデーターベース登録が多数行われ、知的財産権の取得が着実になされた。
費用対効果については、当初の目標を達成し、かつ実用レベルに到達していることから費用対効果は十分であると評価した。
以上のとおり、育種学、化学分析学、生体機能学、食品工学などの異分野研究者が、コーディネーターの適切な取りまとめのもとに、基礎的研究から実用化・製品化まで成し遂げた実績は高く評価できる。