生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2010年度 事後評価結果

花芽形成促進物質KODAによる果樹の花芽着生制御技術の開発

技術コーディネーター

吉田 茂男((独)理化学研究所植物科学研究センター)

研究参画機関

  • (独)理化学研究所植物科学研究センター
  • 静岡大学創造科学技術大学院
  • (独)農研機構果樹研究所
  • 千葉大学大学院園芸学研究科
  • 株式会社ネオ・モルガン研究所(H18-20)
  • 株式会社資生堂H&BC開発センター

総合評価

当初目標を達成

講評

本研究は、新規天然生理活性物質であるKODAの実用的製造および作用機構の解明を通じて、果樹の花芽着生制御等の利用技術の開発を目的として実施された。技術コーディネーターの適切なリーダーシップのもと、参画した5機関は明確な役割分担と連携を図り、着実かつ効率的に研究を推進し、計画通りの(一部においては計画を上回る。)成果を得ている。
産業創出につながる「利用技術開発」では、花芽形成の促進はウンシュウミカン、ニホンナシ、リンゴの3樹種とも効果が確認されたが、効果の程度には樹種による差異があった。KODA処理により、当初予想されなかったいくつかの副次的効果が確認されており、特にニホンナシの自発休眠打破効果はニホンナシの施設栽培や露地の安定栽培において期待できる効果である。
「KODAの作用機構の解明」では、代謝経路を解明するとともに全代謝産物の構造を決定するなど重要な成果を得ている。また、LC-MS/MSによる超微量分析法を確立したことは、今後の研究に大きく貢献する成果である。さらにモデル植物においてLOX・AOS変異株による形質転換体シリーズを整備した成果は、今後の基礎研究発展に貢献する成果である。これら基礎・応用研究をとおして、オキシリピン系化合物の植物成長調節効果を見いだし、植物生理学に新しい分野を切り拓いた。
「実用的製造法」では、開始当初の1/100のコストで製造できる技術を確立し、商品化が可能な段階にまで達したことは、新規植物成長調節剤を活用する産業創出につながる成果である。学術論文9編、特許出願7件は高く評価できる。ただし、KODAの常温での不安定性は、植物成長調節剤として実用化する上で障害となる。幸いにもKODAより安定な化合物もすでに見出されているので、早期に化合物を絞り込み、KODA活性が高く安定な植物成長調節剤の商品化を目指して欲しい。
以上のように、本研究は、学術的および技術開発ともに当初計画の達成と新規植物成長調節剤の開発・実用化に向けた努力がなされており、新規事業創出への発展が期待される。費用対効果についてもコンソーシアム全体を俯瞰して妥当である。