生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2011年度 事後評価結果

イオンビームとゲノム情報を活用した効率的な花き突然変異育種法の開発

研究代表者氏名及び所属

田中 淳(日本原子力研究開発機構)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本研究では、これまでの観念的な評価方法に基づく花色変異育種に対して、科学的な観点に基づいて育種を行う重要性を提言した。

学術成果の公表件数が特許3、論文17であり、5研究機関5年間の公表数としては、決して多くはないが、インパクトファクターが高い学術誌に公表されており、研究内容の学術価値が高かった。

具体的な研究成果として、残念ながら、シクラメン青紫品種育成を始めとする新品種の作出、アントシアニン生合成遺伝子の同定並びにその凝集体の単離及びアミノ酸配列の解明までには至らなかったが、イオンビームによる効率的な変異誘発法として、ペチュニアの高蔗糖濃度処理により選択的に花色変異を効率的に得る方法を開発し、特許出願した。カーネーションでは、イオンビーム照射又はその段階的照射を利用して輝きの強い系統や輝きの増した赤系メタリックの系統を、ペチュニアでは実用化が有望な赤色花の半匍匐性系統や白花の匍匐性系統を獲得した。以上のような効率的な変異誘発法、選抜法及び新品種候補の開発が生物系産業創出に寄与するものと判断する。

また、イオンビーム照射により、シクラメン属では最初のデルフィニジン3G5Gによる赤紫変異体や黄色、白色といった芳香シクラメンにはない花色変異体を獲得した。カーネーションの4種の主要アントシアニンの非マリル体を主要色素とする系統を見出し、色素の凝集性と色調の関係を明らかにするとともに、コピグメントの検出法を開発し、シクラメンの紫花色の発色に関与するコピグメントを検出した。

特に、基質にアシル化糖を用いるものとして、カーネーションにおけるアントシアニン5位配糖化遺伝子の単離・解析に世界で最初に成功し、新規糖供与体としてアシル化グルコースを発見し、その遺伝子機能を確認した。また、芳香シクラメンにおけるアントシアニンメチル基転移酵素をコードする遺伝子の単離に成功した。さらに、ペチュニア品種における斑の形成には、順方向に並んだ2つのカルコン合成遺伝子を対象とした転写後抑制が関与していることを解明した。