生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2011年度 事後評価結果

家畜受精卵生体外育成用マイクロバイオリアクターシステムの開発

研究代表者氏名及び所属

酒井康行(国立大学法人 東京大学生産技術研究所)

総合評価結果

当初目標を達成

評価結果概要

全世界的な乳用牛の受胎率低下を解決するため、品質の良い受精卵を効率良く選別・回収する新しいシステム(リアクター)開発を目指し、体外受精卵の初期卵割様式の分類と胚盤砲の酸素消費量から受胎性の高い胚盤砲を選別できる高品質受精卵の自動品質評価システムを確立した。また、本システムによって培養したマウスの受精卵の移植試験を実施し、染色体異常の無い子供の誕生を確認するとともに、ウシ受精卵の受胎試験を行い受胎可能であることを確認した。さらに、マイクロバイオリアクターの商品化を目指し、簡易型リアクターを「ID culture」と命名、販売を開始して、1,000個以上の販売実績を得ている。これらの成果は、当初の目的を超え、肉用牛の生産を含めた家畜産業の進展や、生殖補助医療への展開を視野に入れることができる成果であり、本課題の意義がさらに大きくなったように感じられる。しかし、開発したシステムを利用して生産したウシに、生理的異常のないことの確認を目標にしながら、これが全く達成されていない点は残念である。

中間評価時点では全体的にもたつき感があったが、その後は、コンソーシアムとしての連携も十分にとられ、最終的には当初目標を充分に達成できたと判断できる。特に、高品質受精卵の自動品質評価システムは、これまでに無いものであり、今後大いに利用される可能性がある。また、論文、特許出願や、簡易型マイクロリアクターの開発・商品化等、総合的な観点から研究実績はおおむね良好であったと評価できる。

以上の成果は、哺乳動物胚の培養システムに対する新提案という意義を持つことから、情報発信を継続し、研究成果が学術研究、産業、新分野開拓等に広く利用されるよう努めて頂きたい。