生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2011年度 事後評価結果

BSE等プリオン病の発症前診断を可能とするバイオチップの開発

研究代表者氏名及び所属

軒原清史(株式会社ハイペップ研究所)

総合評価結果

当初目標を達成

評価結果概要

本研究は、タンパク質の構造を読み取る素子(デザインペプチド)をアレイ化した次世代型バイオチップを開発し、BSE等プリオン病の発症前診断を可能とする診断技術の開発を目的として実施された。

当初計画していたプリオン病の発症前診断の確立は、技術的および費用の面で非常に難しいと推察されたが、研究期間内にペプチドの合成、チップへのペプチドの固定化、チップ表面などの改良、検出系の構築など、ペプチドチップのプラットフォームを構築することができた。関連して開発された、凝集性の高いペプチドが精製できる新規カラムHiPep-Intradaは用途が広く製品として優れている。このようにペプチドアレイ検出系に関する技術力は非常に高められた。特に、プリオンの測定法について特許公開に至った点は高く評価できる。一方、プリオンの種類の同定が可能なペプチドの選別ができたこと、実際の牛脳部分加水分解物から凝集作用のあるペプチドを特定できたことなど、学術面でも優れた成果が得られた。ただし、実際のBSEの発症前診断という当初の目的に対し、構築したペプチドアレイが機能するかどうかは未確定であり、この点は当初目標には到達していない。

研究期間と研究費を考慮すると、原著論文は3報で、投稿中2報を含めても少ない。知的財産権は特許出願2件と実用新案権成立3件の成果を得た。研究費はハイペップ研究所に全体の約80%が投入され、ペプチドアレイの作製と検出系の構築に使われたが、研究開発対象の難易度を加味して総合的に判断すると、大きな問題はなく、コンソーシアム全体の費用対効果はほぼ妥当な水準である。

以上のように、本研究は、参画研究機関が連携してペプチドアレイによるBSE診断にチャレンジし、C-BSE, L-BSE, およびスクレイピーを識別可能なペプチドを同定して、バイオチップの可能性を示した点は評価できる。ペプチドアレイは様々な用途が考えられることから、今後はこの研究で培ったノウハウや開発要素を駆使して生物系新産業の創出に寄与して欲しい。