生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2011年度 事後評価結果

カイコバキュロウィルスによる犬フィラリア診断薬の開発及び感染防御抗体の解析

研究代表者氏名及び所属

今西 重雄(独立行政法人農業生物資源研究所)

 総合評価結果

やや不十分

評価結果概要

本研究では、犬フィラリア虫の特異抗原遺伝子を網羅的に探索し、新たなカイコ培養細胞・バキュロウイルス発現系を利用して候補抗原タンパク質を作り、モノクローナル抗体を作製して犬フィラリア診断薬を開発することを目的として実施された。

先導的開発研究計画であったが、カイコバキュロウイルス発現系を駆使した新規犬フィラリア診断薬とキットの開発目標が残念ながら達成出来なかった。また、一連のシステムを駆使して作製された診断薬候補についても、既存のモノクローナル抗体などに比較しての有用性・優越性を示すことが出来なかったのは残念である。コンソーシアムとしての連携は概ね保たれていたが、一部参画機関の研究進捗の遅れが全体の進捗と成果に影響を及ぼした点は否めない。

一方で、開発した無血清培地で培養できるカイコ細胞を高密度で培養する技術、および低温処理によってウイルスに対する感受性を向上させる方法は、基盤技術として本研究の推進に寄与した。また、フィラリアcDNA抗原遺伝子の網羅的解析によって、診断薬開発のカギとなる抗原遺伝子1つを決定し、モノクローナル抗体の作製に至ったことは評価できる。しかし、フィラリア成虫の非膜タンパク質由来のIgM抗体であり、診断薬としての実用化には課題も多く、なお一層の工夫と努力が必要である。

研究実績としては、公表した原著論文は5年間で全研究機関を合わせても、国際誌に1報と国内誌(和文)に1報があるにすぎない。成果を論文・学会発表などを通じて公表することは学術的貢献として重要であり、特許出願3件を考慮しても低調である。

以上のように、コンソーシアム全体を俯瞰して、目標達成に向けての努力がなされたが、学術的成果と技術的進歩は限定的であり、費用対効果も低いと評価せざるを得ない。