生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2005年度 中間評価結果

こめトコトリエノールを活かす食品開発とこめアグリビジネスの展開

技術コーディネーター

宮澤 陽夫(国立大学法人東北大学)

参画機関

国立大学法人東北大学、日本医科大学、(独)農研機構東北農業研究センター、富山県農業技術センター、オルガノ株式会社、三和油脂株式会社

【研究内容】研究期間5年

本技術コーディネーター等はすでにこめ糠に含まれるビタミンEの中のトコトリエノールが血管新生を阻害する作用を有することを発見している。本研究では米糠トコトリエノール(T3)を特徴とする血管新生予防食品を開発し、特定保健用食品(トクホ)をめざす。 研究期間前半には、(1)T3 の血管新生予防効果解明のために、高純度米糠T3、米糠T3 食品、T3 標品を使用した細胞実験・動物実験で、健康機能(血管新生予防作用)と安全性を確認し、ヒト臨床試験の実施体制を整える。さらに、米糠T3 の新規生理作用も探索する。(2)T3 高生産イネの開発を目指して育種資源を選抜し、またT3 高生産に適したイネ栽培・収穫と米糠の貯蔵等の条件を検討する。(3)高純度米糠T3 大量製造のための大型T3 製造試作機を開発し、一方では脱臭スカム油から中純度の米糠T3 原料を製造し、これを使用した米糠食品を企画開発する。

【中間評価結果概要】

日本における米をとりまく現状、コメT3を高生産する米品種の開発、その品種の米糠から高純度T3を大量製造する方法、T3の持つ血管新生抑制作用という新規機能性の発見、その臨床応用と、一連の流れは独創的かつ非常に興味深いものであると思われる。
しかし、T3について,その血管新生予防作用でトクホをとるのは現実的には不可能であろう。それよりは,T3が示す他の生理活性作用,例えばコレステロール低下作用や肥満抑制作用でトクホをとる戦略に研究方針を向けた方が,実現の可能性が高いと思われる。また動脈硬化阻止作用については,T3の新しい生理作用としては興味がもたれるが,それをビジネス展開にまで持っていくのは不可能ではなかろうかと思われる。
ヒト試験(安全性試験、臨床試験)が予定より遅れているが、技術コーディネーターは指導力を十分に発揮して,臨床試験を軌道に乗せることが肝要であろう。
T3を多く含むお米の新品種の作出は学術的意味があっても、広く使われている品種の米糠にもこれが比較的多く含まれているので、商業ベースの観点から見たとき、T3 高生産イネの開発研究のプロジェクトにおける位置づけをさらに明確にする必要性がある。
T3の分離技術の確立については評価するが、調製技術のうち貯蔵中のT3の減少に関するメカニズムの追求がなされず、分解物についての解析がなされていないのは、対策を立てるための情報不足を招いており、予備的検討を行う心づもりが必要である。
全体として各分担班相互のコミュニケーションが貧弱であったことは否めない。