生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2005年度 中間評価結果

砂糖及びセルロースを原料とする酵素合成アミロースの製造と利用

技術コーディネーター

鷹羽 武史(江崎グリコ株式会社)

参画機関

江崎グリコ株式会社、三和澱粉工業株式会社、大阪府立大学

【研究内容】研究期間4年

食品の構造形成やテクスチャー形成にかかわる主要成分のデンプンの中で、アミロースは食品原料として効率的な製造方法がなく単独の利用もない。そこで、砂糖及びセルロースを原料としたその酵素的大量製造技術を開発し、新規食品素材としての安全性を評価してその機能と特徴を生かした新規食品を開発する。

  • 砂糖・セルロースを原料とした酵素合成アミロースの生産技術の開発と安全性の評価
  • 酵素合成アミロースの基礎物性と機能性の解明
  • 食品用の酵素合成アミロース大量生産技術の開発

【中間評価結果概要】

本課題は、主目標の一つとして、砂糖からアミロースへの変換技術の開発に焦点を当て研究を進め、その成果として、分子量の揃った各種分子量のアミロース大量分離精製法を開発し、精製標品の物性評価による高分子アミロースの新しい利用技術を開発した。実際に砂糖を原料にした場合のアミロース製造は量産化体制に入っており、この開発研究は将来性があり優れていると評価でき、最終年度までには、さらに特許出願、原著論文の発表が期待できる。
一方、この研究目標のもう一つの大きな部分を占める、セルロースからのアミロースへの変換については、あくまで技術開発を念頭に計画されたものではあるが、当初の目標を達成することはできず、その目標設定に、現時点では無理があったのではないかと判断できる。しかしながら、それに代わるグルコースからのアミロース合成法を開発しており、評価できる。
全体の取り組みは、セルロースからのアミロース酵素合成系の基礎技術開発について方向転換をした点があるものの、技術コーディネーターの指導力もあり技術開発レベルは高く、研究分担三機関が連携し異分野融合事業に相応しい内容になっており、概ね当初の計画に沿って成果が得られている。また、全体の技術開発の進展は、糖質産業はもとよりバイオマスの基盤技術とも直結しており、今後の成果は社会に対する波及効果、影響も大きい。
問題点を挙げれば、実際の砂糖からの酵素合成アミロース生産技術を生かした生産物の事業化を図るにはコスト計算が欠かせず、低分子アミロースに関しては結晶アミロースとして市場に提供できる見通しとなっているようであるが、高分子アミロースに関してはコスト面で依然ハードルを越えなければならない問題点を抱えており、現段階ではまだ先が見えていないことである。是非、コストを算出し採算ベースの目標値を設定すべきである。但し、今後の研究の進展具合により高分子アミロースの高付加価値機能(食品分野以外のナノテク素材など)が見出される可能性もあり、製造コスト低減の技術開発とともに残された期間での研究進展が期待できる。