生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2005年度 中間評価結果

免疫基礎研究に基づく食物アレルギー対策食品の画期的創成

技術コーディネーター

近藤 直実(国立大学法人岐阜大学)

参画機関

国立大学法人岐阜大学、同医学部付属病院、ビーンスターク・スノー株式会社、百福インターナショナル株式会社

【研究の概要】研究期間5年

食物アレルギーは、喘息、皮膚炎、呼吸困難等やアナフィラキシーショックを起こすなど重大な病気である。そこで、牛乳/大豆タンパク質アレルギーについての十分な基礎研究に基づき、生体の免疫の原点に戻って経口免疫寛容を誘導し"食べて治す"、牛乳/大豆タンパク質分解物利用の食物アレルギー対策食品の画期的創成を目指す。

  • 食物アレルギーの病因病態の遺伝子学的およびタンパク質構造学的解析
  • 食物アレルギー患者の臨床像の解明および新規治療法の開発
  • 免疫寛容を誘導する牛乳タンパク質分解物の開発および製品化
  • 免疫寛容を誘導する大豆タンパク質分解物の開発および製品化

【中間評価結果概要】

本課題は、T細胞エピトープを保って、B細胞エピトープを除くという独創的アイディアを軸とし、本来基礎的に明らかでない免疫寛容の分子機構を明らかにしつつその結果を踏まえて新しい免疫療法を食品という具体的な形で確立しようとするものであり、可成りの困難を伴うことは十分に予想され、当初の進行予定から見るとやや遅れているが、実際の研究期間を考慮に入れれば致し方のないところである。全体としては、その困難さを乗り越えるべく、研究を着実に進めておりその点で、評価できる。
遅れの原因は、大豆ペプチドからの抗原の精製が遅れたことによるものであり、その関連の研究に当初計画より遅れが認められる。しかしながら、遺伝子組み換え体による当該抗原タンパク質の生産を実現し、それに切り替えたことで今後の研究の進展に期待できる。このことはコンソーシアムとしての協力体制が機能していることを示している。
精製したペプチド抗原で免疫寛容を誘導する基礎及び応用研究がこれから実施されるが、最終目的が食品の開発ということから、牛乳や大豆タンパク質全体にその原理を適用し、できるだけ大豆あるいは牛乳のタンパク質全体を利用する新しい免疫寛容誘導食品の開発を視野に入れて研究を行って欲しい。
免疫寛容成立の機序がいまだ解明されていない現状においてはハイリスクを背負った研究課題であり、出来るだけ早く介入実験を開始し、プラスの結果を出すことが望ましい。大学と大学病院との連携を一層密にし、極めて慎重に介入試験を進める必要があり、介入前に末梢血単核細胞を使用した解析を含む患者の性状を精査し、症状の悪化を誘起する危険性を回避することが肝要である。また、大豆ペプチド調製用原料の精製法確立が遅れていること、精製効率が低いということが問題ではあるが、単離にこだわらずに、ある程度の濃縮画分でも使用可能かどうか検討することも必要である。なお、ヒト試験に移すrationaleが必要であり、いくつかの疑問点の解消が必要である。