生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2005年度 中間評価結果

マイクロロボティクスを適用した胚操作の自動化

技術コーディネーター

新井 健生(国立大学法人大阪大学)

参画機関

国立大学法人大阪大学、(独)産業技術総合研究所、国立大学法人東北大学、川崎重工株式会社、富士平工業株式会社、(独)農研機構畜産草地研究所

【研究内容】研究期間5年

熟練者の手作業に頼っている細胞・卵子の顕微操作(胚操作)を、微小流路上でマイクロロボティクスを適用して自動化し、核移植、性判別、顕微注入など各種作業の効率化、高品質化、大量生産化を実現し、畜産および生物学分野の新たな産業を創出することを目指す。基盤上に卵子や細胞の切断・分離、カップリング・注入、融合を行うモジュールを作成し、個々のモジュールを目的に合わせて組み合わせ、総合的に制御するとともに、操作胚の発生能を確認・評価する。

【中間評価結果概要】

家畜を対象としたクローニングの自動化と効率向上を、マイクロマシン技術で作るマイクロ流体システムを用いて実現しようとする計画で、きわめて挑戦的な課題であり、生物系と工学系の研究者が協力して進める学際的な研究である点でも高く評価できる。課題はカップリング、融合モジュールで一部遅れがあるが、全体としてほぼ中間評価時までの目標を達成しており、今後の成果が十分期待できる。コンソーシアムは頻繁に連絡検討会議を開催して良く連携を取っており、特に大阪大学のリーダーシップと畜産草地研究所のコンソーシアムへの貢献は顕著である。強いて言えば、川崎重工と富士平工業、産総研の連携をさらに強化して研究の推進に努めて欲しい。
今後の研究を進めるにあたり、各モジュールを統合して全体システムを組み上げるところに最大の障壁があると思われる。特に、システム流路内の液体を時に交換しながらシステム全体で協調動作させる制御系は、複雑で開発に時間がかかる可能性がある。これらの方策を早急に検討し、統合した全体システムの構成を確定し、インターフェースの開発に注力することが肝要である。また、個々のモジュールを統合したシステムで、核移植胚の健康な体細胞クローン個体への成長を確認して欲しい。
個々の技術は、ES細胞・初期胚キメラ作製、卵巣卵子の選別などにも応用できる可能性がある。卵丘細胞の付着数による卵子選別、卵丘細胞や透明帯の除去、蛍光染色なしの1/2胚の選別、1/2胚への接着ドナー細胞数の制御などが可能になれば、よりインパクトのある技術となる。
特許の出願、論文の発表に関しては、これまでの実績は多くないが、これは挑戦的かつ創造的な課題と取り組んでいるためであり、今後、多くの成果の発表を期待する。