生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2005年度 中間評価結果

海外輸出を狙った不活化花粉利用「種なし果物」の生産技術の開発

技術コーディネーター

杉山 慶太((独)農研機構北海道農業研究センター)

参画機関

(独)農研機構北海道農業研究センター、国立大学法人高知大学、高知県農業技術センター、鳥取県中央農業協同組合、ケイワン(株)

【研究内容】

軟X線照射した不活化花粉を利用して種なし化する技術は品種の特性を維持したまま種なし化できる技術である。スイカとブンタンの高品質の種なし化生産技術を開発し、商品化することを目的とし、研究終了時までに以下の目標を達成する。

  • 組織学・生理学的側面から不活化花粉による単為結果誘導メカニズムを解明するとともに、スイカの省力的授粉技術、他家受粉防止技術、種なしスイカの量産化技術を開発する。
  • ブンタンの種なし化に適する花粉への軟X線照射線量を決定し、花粉の保存方法を開発する。また、良好な果実肥大技術、糖度向上技術等を開発する。
  • 種なし果物のテスト販売を実施し、収支状況などから海外市場開拓への可能性を検討する。

 

【中間評価結果概要】

軟X線照射した花粉の増量剤にはマリッジパウダーが適し、真空または窒素ガス封入して-20°Cで90日以上保存できた。開花前日の蕾に授粉しても実用的な果実が得られた。種なしスイカは果形が縦長になりやすく、糖度が高くなった。フルクトース、グルコースが減少し、スクロースが増加した。熊本県、鳥取県において各作型で種なしスイカに適合する品種を選定した。栽培技術によって種なしスイカの作出の精度を高めることが出来た。種なしスイカを国内市場に出荷し、試食会等を開催して評価した。ブンタンでは不活化花粉で授粉すると、胚乳の発達異常が関与した偽単為結果によって種なしになること、受精期のジベレリン合成能力は正常であるため結実することを明らかにした。軟X線照射花粉の保存には冷凍、窒素ガス封入の効果が高いことを明らかにした。
このような成果が得られたことは評価できるが、「海外輸出を狙う」という視点での研究は必ずしも十分に進展していない。本コンソーシアムを成功させるために、「何時、何処に、どのようなタイプ(大玉、小玉)のスイカをどのように輸出するのか」について問題点を整理して研究を行う必要がある。その際、輸出相手国で、高級スイカの需要がどの程度あるのか、マーケティングを行う必要がある。
スイカについては、3倍体の「種なし果実」と本研究成果で得られた「種なし果実」の差別化をどうするのか検討が必要である。3倍体の種なしスイカと差別化する項目について重点的に研究を実施する必要がある。