生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2005年度 中間評価結果

酵母由来中空バイオナノ粒子を用いる革新的超高感度バイオセンシング技術の開発

技術コーディネーター

谷澤 克行(国立大学法人大阪大学産業科学研究所)

参画機関

国立大学法人大阪大学産業科学研究所、(株)ビークル、東レ(株)

【研究内容】

酵母が生産するB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質由来の中空バイオナノ粒子を応用して、現在、医療や環境、食品検査分野で大きな課題となっているバイオマーカーや環境ホルモンといった微量成分の迅速かつ高感度検出を可能にするセンシングツールを開発することを目的として、研究終了時までに以下の目標を達成する。

  • 従来の50倍以上(pg/mlオーダー)の検出感度の達成
  • 中空バイオナノ粒子を用いてタンパク質を基板上に整列固定化する技術の完成と、世界初のタンパク質整列固定化ツール基板の開発
  • 抗体を整列提示する中空バイオナノ粒子による物質の超高感度センシング技術の完成

【中間評価結果概要】

現在の免疫測定法のタンパク質抗原検出レベルは通常のサンドイッチELISAで1ng/mLアビジンービオチン系を使えば10pg/mLが一般的であることから、結合親和力の十分高い適切な抗体を用いて、本法がどれほどの感度があるかを明確にした後、アレルゲン検出を行うよう実験方針を変更することが望ましい。センシング粒子表面に抗体などの物質認識分子を効率良く提示する技術の開発は、本プロジェクトの推進上極めて重要であるが、抗体Fc部位と特異的に相互作用するZZタグを表面に提示するセンシング粒子に、IgGを結合させ、さらにこのIgGとZZタグを化学的架橋法により固定化する技術や、IgGが結合していないZZタグをscFcでブロッキングしてバックグラウンドを低下させる技術の開発に成功したことは評価できる。
一方、遺伝子工学的にZZタグのC末端に標識タンパク質を融合させ、センシング粒子内に標識タンパク質を提示させる方法はオリジナリティーが高いが、融合させるタンパク質としては化学発光あるいは生物発光を触媒する単量体酵素が望ましく、例えば、レニラルシフェラーゼを融合したセンシング粒子の開発とその粒子の収率向上などに研究を集中してみてはいかがか。他方、樹脂基板上にセンシング粒子を固定化し、ZZタグを基板上に整列させることにより、Fc部位とZZタグの親和性を利用して1次抗体の配向性を制御しつつ固相化する技術の開発に成功していることは評価できる。
今後は、化学修飾によって1次抗体、scFcとZZタグを共有結合で連結し、センシング用ツール基板の安定化、低バックグラウンド化を進める必要がある。
なお、研究期間前半において原著論文、誌上発表、口頭発表が全く行われていない。グループ単独、あるいは他のグループと共同で研究開発成果を国内外において積極的に発表する必要がある。