生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2006年度 中間評価結果

花芽形成促進物質KODAによる果樹の花芽着生制御技術の開発

技術コーディネーター

吉田 茂男(独立行政法人理化学研究所)

参画機関

独立行政法人理化学研究所、国立大学法人静岡大学、(独)農研機構 果樹研究所、国立大学法人千葉大学、株式会社ネオ・モルガン研究所、株式会社資生堂

【研究内容】

本研究は、わが国で発見された新規な天然生理活性物質であるKODAを知的財産資源として、活用し、KODAの実用的な製造法およびKODA作用機構の解明をとおして、果樹(ウンシュウミカン、リンゴ、ニホンナシ)の花芽着生制御等のKODA利用技術を開発することにより、花芽分化の促進、休眠覚醒、隔年結果の防止等の効果の実証を目指す。

【中間評価結果概要】

参画6機関は役割分担が明確で、連携を図りながら積極的かつ効率的な研究推進を行っている。成果の普及に直結する「KODAの利用技術の開発」では、供試したウンシュウミカン、ニホンナシおよびリンゴにおいて、KODA処理による花芽着生効果が確認された。また、ニホンナシにおいて、当初研究計画では想定されていなかった自発休眠打破効果が見いだされたことは高く評価できる。この革新的な成果を実用化技術にまで高めるためには、樹齢、樹勢、品種間差、気象条件、有効な施用法等幅広い検討が必要で、今後の取り組みに期待したい。「KODAの作用機構の解明」では、内生KODAの分析法の開発に予想外の時間を要したが、参画機関の協力によりGC/MSによる高精度分析法を確立することができた。代謝レベルではKODAの柑橘葉での代謝過程をほぼ解明し、KODA動態解析手法の確立とKODA類縁体の調製に成功するなど、計画以上の進展も認められた。しかし、遺伝子発現レベルではKODAによるシロイヌナズナの花芽形成誘導効果が認められなかったことから、後半の研究ではKODA関連遺伝子欠損体や過剰発現体の利用によるKODAの作用機構解明研究の強化が望まれる。一方、「KODAの実用的な製造法の確立」では、大腸菌の不均衡変異導入法を用いてLOX酵素の改変に取り組み、スクリーニング系が開発されたが、いまだ目標とするレベルの高活性株は得られていない。しかし、従来の酵素法による製造では、多量のKODAサンプルを合成、提供するとともに、分離精製工程を効率化し大幅な生産コストの削減を達成した。さらなる低コスト化を含めトータルとして真に実用的な製造法の確立を目指し、戦略の一体化と研究計画のすり合わせを期待したい。その際、アオウキクサの酵素の評価と活用も大きな課題となる。
以上のように、全体としてほぼ当初計画を達成しているが、参画機関の連携を一層強化し、重要課題に集中して取り組み、所期の目標である「花芽着生制御技術の開発」に挑んで欲しい