生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2006年度 中間評価結果

キサントフィルの多機能性の解明と食品素材への高度利用

技術コーディネーター

宮下 和夫(国立大学法人北海道大学)

参画機関

国立大学法人北海道大学、(独)農研機構 食品総合研究所、サニーヘルスホールディングス株式会社

【研究内容】

海藻や野菜に含まれているキサントフィルの新たな機能として、抗肥満作用、抗糖尿病作用、生体内DHA合成促進活性について詳細を解明する。具体的にはキサントフィルの多機能性の分子機構をニュートリゲノミクス(遺伝子による栄養機能解析)とメタボロミクス(代謝物分析による機能解析)を活用して解明する。また、海藻や野菜の未利用部分から食品等へ有効活用できるキサントフィル含有機能性素材の製造技術を開発し、その製品化を図る。

【中間評価結果概要】

フコキサンチンの抗肥満作用や抗糖尿病作用などの機能と、その分子機構の解明に関しては大変良い成果が得られ、今後の展開が期待される。また、キサントフィル類の吸収代謝に関する研究も、目標にほぼ近いところまで研究が進められている。安全性に関するテストも、当初の目標をほぼ達成している。さらに、フコキサンチンの安定化で評価すべき成果を得ている。ただ、商品化研究は19年度開始予定であったが、20年度に至っても全く手がつけられておらず、本プロジェクトの成果を評価する上で大きなマイナス要因である。
本プロジェクトでは、原料の供給をどうするかが評価の上で重要なポイントになると考えられる。当初の主原料はワカメの未利用廃棄部分であり、きわめて安価に、量的にも多く供給できるという主張であった。今回、わかめ未利用部分からアカモクへの転換が提案されたが、アカモクには、原料価格、商品開発後の安定供給体制、安全性の確認等、解決すべき問題が残されていると考える。
今回、食品素材の供給を分担する機関が抜けたことにより、コンソーシアムの体制が崩れ、その機能が十分には働かなかったと思われる。また、今回のヒアリングでの説明は、抜けた機関の役割の補完を十分に行ったと説得できるものではなかった。
マリンテック釜石の不祥事は、研究以外の重大な社会的問題を含んでおり、今後も本プロジェクトを継続するには、社会的責務を果たさなかったことを埋めてなお余りある成果を上げうる見通しを示すことで、社会に納得してもらう必要がある。残念ながら今回の中間評価ヒアリングでは、そのような内容の提案はなかったと考える。従って、本プロジェクトは本年度をもって打ち切らざるを得ないと判断する。
しかしながら、本研究で得られた食品機能に関する諸事実、基礎的データは大変価値があり、今後の新しい展開が期待できる。今回の評価結果は残念なものではあったが、関係各位の一層のご努力を祈るものである。