生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 中間評価結果

異種染色体導入コムギが産生する新機能性物質の利用技術の開発

技術コーディネーター

荻原 保成(横浜市立大学)

参画機関

横浜市立大学、(独)理化学研究所、(独)農研機構近畿中国四国農業研究センタ-、日本製粉株式会社、株式会社ファンケル、株式会社ファーマフーズ

【研究内容】

オオムギの相同染色体1対ずつを交配によってコムギに付加した、オオムギ染色体導入コムギ系統を育成し、生育特性に加え、トランスクリプトーム解析および代謝産物の精密分析により有用な新規機能性物質の産生を追究するとともに、それら物質・抽出物の機能性を明らかにし、加工利用技術の開発を目指す。

【中間評価結果概要】

国産コムギの諸問題をNon-GMO技術の利用によって解決するプロジェクトとして大いに期待されて始まったが、前半の結果から、出来ることと出来ないことを見極める必要が生じている。新規機能性物質の発見と利用技術の開発を謳っていることを改めて確認し、後半は,参画機関が一体となってより重点的に焦点を絞って推進する必要がある。
作出したオオムギ染色体導入コムギ系統の特性とともに、固定化・安定化が重要であるため、その筋道(方法と結果)をしっかり説明する必要がある。特に、異種染色体導入によって生じる成分特性や品質の変化を正確に把握するため、供試親のコムギとオオムギを常に対照として比較し、シャッフリングなど他の効果も見逃さない評価・検討を行い、データベースとして記録・保存して欲しい。植物で初めて発見された機能性物質や代謝系などの解析は、怯まずに親系統でも大胆に進めて欲しい。 オオムギ第1染色体(1Hs)を導入したコムギ系統においてコムギ粉の物性に向上が認められ、有用性が示されているものの、特性評価が不十分であるので、後期にその実証を期待する。また、各企業とも、重点的に評価・実証する機能性分野について焦点が明確になりつつあるので、後半における強力な取り組みを期待する。
研究費の配分では、事業化につながる企業側の合計が全体の3分の1以下と少ない。本コンソーシアム全体の目標に照らし、実用化、事業化につなげる企業に研究費を増額配分して責任を持たせ、前半の遅れを取り戻す必要がある。また、近農研は材料の育成と提供に加え、網羅的解析、新機能性物質の発見、利用技術の開発までカバーしており、貢献度が高いので必要な研究費の確保に配慮する。
本プロジェクト固有成果の発表論文が極めて少ない。後半に向けて着実な達成を期待する。特に、横浜市大と理研がその任を分担すべきである。参画機関の知的財産権の出願も少ないので、後半に期待する。